先に説明してほしいのは無理な事?
「シャロン嬢、話をしようか」
どんどん表情が抜けて行ってるであろう私の気がついたみたいで、ルーシェンさまはテラスの方へと私を連れ出した。
「もっとゆっくり時間をかけるべきだとは思うんだけどね。早急に君をちゃんと守れる後ろ盾が必要なんだよ」
ルーシェンさまが淡々と説明してくれる。
「・・・」
「なぜグランデ家が君の希望を聞きもせずに養子縁組を急いだかというと、君の父親がとある嗜虐趣味の男爵に君を売りつけようとしたから」
追い出したいはずの私に婚約とか何も言ってこなかったと思ってたらそっちだったの。
お祖父様からの打診を無視できなくなって悪態ついてただけだったのか。
「それに君が希望している平民にすることはできない。だって平民だったら君は抵抗が出来ないまま、よくて神殿、最悪はどこかの貴族に監禁される」
「何も目立つ事をしなければ良いんでしょう?」
渡り人って知られなきゃ良いなら大丈夫なはず。
「君に僕の周りにいる妖精が視えるように、他にも不思議なものを視てしまう人がいるんだよ。見つかってしまってからでは助けてあげられない」
今までが運が良かっただけ?夜会も茶会もほとんど出ずにいたから助かってたの?
「君はまだ運が良かった方なんだよ。親が君の事を知っていたらおそらくはすぐに神殿に入れられてたからね」
お祖父様が隠してくれて良かったのは理解してる。貴族だからいきなり結婚したりも仕方ないのもわかってる。だから平民になろうと思ったし。
父が変態に売ろうとしてたなら、ルーシェンさまが結婚してくれるのは有り難い事なのはわかったけど!
なんで先に説明してくれないの?
我慢しなくちゃって思うのに目から温かいものが流れてしまう。
「僕はね、結婚したいとは思ってなかったし、しないだろうなって思ってたんだけど。君を見つけた時、何かあったかい気がしたんだよね。だからゆっくりで良いから気持ちが通じ合って行ければ良いと思うんだよ」
先に言ってくれたらもう少し心穏やかに聞けたのに・・・!
エイミーと付き合ってる変態さんとご同類に分別してやるんだから!!
「君に見えてるこの光はね、僕と相性が悪い相手には絶対見えないはずなんだよね?」
ニッと笑うその顔が無性に憎らしい!
他の人たちは全く光ってないし王族の人たちもそこまで光って無いから何か理由があるとは思うけど、相性が良いなんて思わないもん!!
「君は今まで通り好きに研究したり本を読んだり町に行けば良いよ。僕は君の絶対の味方で後ろ盾って事だけは分かっていてくれればね?」
私の倍近いオジサンなくせに、首を傾げたって可愛くないから!
「えー、おほん!ご・・・ごほ、っん!!」
後ろから控えめな?自己主張をされた。
さっきチラリとみた王様(!)とお祖父様たちが居心地悪げにしている。
「兄上、空気読んでください」
ルーシェンさまが機嫌悪げに王様に文句をつける。
「いや・・・弟が幼い気な少女を困らせているのはお兄ちゃんちょっと・・・?」
困惑げな王様と少し申し訳なさげのお祖父様と伯父様。お祖父様たちは共犯みたいなものだしね。
お兄さんは良い人そうなのにルーシェンさまはどうして意地が悪そうなのかしら?
「まぁ兄上には全部決まったらお知らせしますよ」
忌々しそうに吐き捨てるルーシェンさまに王様は、
「いや?決める前に説明してほしいな!?」
と慌てて嗜める。
ですよね!!?
恐れ多いけど王様との方が話が通じそうって思ってしまった。
「はぁ。アル、とにかく明日説明に来なさい」
王様はそう言ってからパーティに戻って行かれた。
ルーシェンさまは不服そうだけど。




