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Dear my hell  作者: 咲野高行(サキノタカユキ)
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拝啓、私の地獄へ

プロローグ「神殺し(かみころし)」


『嘘をつくと閻魔さまに舌を抜かれるよ』

そんな誰が言い始めたのかわからない常套句を私達は本気で信じない。しかし誰もこの言葉が正しいとも間違っているとも証明することは不可能なのだ。

―死んでみるまでは


 多分、僕、山田晴人は悪事らしき悪事を働いたことはない。強いて言えば小学二年生の頃の算数の小テストで隣の子の回答をチラ見したことぐらいだろう。


小学校の頃から担任の先生には山田くんはいい子ですねと褒められた


中学一年生の後期に僕は学級委員に立候補した。落選こそしたが、それはあくまでもう一人の立候補者である神有優生の人気が高すぎただけだ。もしクラスが違えば僕が学級委員になってた。


余談になるが僕はこの神有優生が嫌いだった

そもそも神有と名字に『神』なんて文字がつくのが気に入らない。そして何より、神有優生という名が彼の体を表しているのが気に食わない。そして食えない奴だ。

人当たりが良く、誰が相手だろうと別け隔てなく人と接し、バスケ部では彼の持つ運動神経を遺憾なく発揮。

成績では二十三位と僕の十五位よりかは低いとはいえ、良成績と言える。


そんな差を感じたのか僕は彼に対して敵対心を抱いていた。いや、抱いていたという表現は的確でない。ずっと心の中にムカつくという陳腐な感情が有り続けたというイメージだ。特に彼と関わりがあった訳ではないが、とにかく彼に対して良い印象は持つことがなかった。最も、その敵対心を察してか神有は僕と関わろうとはしなくなっていったし、二年になってクラスが別々になってからは関わる機会もなくなった。


最も中学2年には納得のいかない事も起こった

『山田を無視してるやつがいるな』

『山田は2年3組のクラスメイトだ。このままでいいのか?俺はここのみんなは笑顔で進級してほしい』

担任の言った台詞だ。今でも思うが、僕は無視なんてされてなかった。ちょっとばかしクラスメイトとのコミュニケーションが少し噛み合わなかっただけで、それをまるでイジメをされたかのように扱われるのは居心地が悪かった。


高校では部活に明け暮れた。

中学の頃は部活に入ってなかった僕だが、高校の強制部活参加という素晴らしい校則からバスケ部に入部した。

そしてバスケ部に神有優生はいない。

彼は結局、僕より学力が一つ高い高校に逆転合格したのだ。なんとなく神有に負けたくないと思った僕は夜遅い時間まで体育館で練習をした。みんなが『もう帰っていいんだぞ』なんて言っても僕の情熱は収まらなかった。同期の部員たちが僕を相手にしなくなっても気にしない。そればかりか僕レベルに部活に打ち込まない彼等を見下していた。


高校2年の真夏の昼下り、セミのうるさい鳴き声と前日の雨による蒸し暑さ。

不快感を、噛み殺し

僕は神有優生を殺した


そして僕も死んだ。なんで死んだのかなんて覚えてない。目を覚まし、そこに写っていた光景は異様なものだった。 

人と人が笑いあい、歌を唱い、人種も性別も時代も明らかに違う人々だろうと手を取り合っている。

さらに少し上に目線をずらすと見えるのは木造りの看板

『Welcome dead people .The name of this place is hell』

直訳で

『ようこそ死者の方々、この地の名前は【地獄】』

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