閑話 自衛隊と冒険者
シェダルと昇が転移してすぐの時
「き、消えた！？」
機動隊員たちは、突然の出来事に驚愕していた。
転移スキルは、ユニークスキルの一つであったため、現実では数人程度しかいないと言われている。
そうなると、一般人でそれを見たことがある者は、一握りしかいない。
故に機動隊員たちは、何故モンスターと先ほど戦っていた冒険者有志達が消えたのか分からなかった。
すると、複数のバギーとバイクが列をなして、国会議事堂前に到着した
「遅くなって申し訳ない！ 冒険者です！」
「モンスターはどこですか！？」
バギーから、騎士スキルの姿をした男性と、弓スキルの姿をした女性が降り、機動隊員に事情説明を求めた。
それと同時期、複数の装甲車が、同じく到着する。
装甲車から複数の隊員が降りたち、武器を構え始めた。
一人の隊員が、機動隊員に近づく。
「陸上自衛隊、一等陸尉の竹中です！ モンスターは！？」
機動隊員たちはそのあまりに突然なことに、皆唖然としていた。
冒険者と自衛隊員が詰め寄る中、一人の隊員が、口を開いた。
「冒険者有志が……ワープホールを作って……」
「ワープホール！？ なんですかそれは！？」
「まさか……ユニークスキルの転移！？」
車から降りてきた冒険者2人は、有り得ないことを口にする機動隊員に驚きを見せた。
一方の自衛隊員はというと……
「またユニークスキルか！ ゲーム脳どもはこれだから困る！」
「なにがゲーム脳だ！ 貴様ら軍隊モドキは俺らより到着するのが遅かったではないか！ ゲーム脳どもに負けた気分はどうだ？」
「誰が軍隊モドキだ！ このコスプレ妄想オタク集団が！」
「誰がコスプレだ！ 守ることしか能がない当たり屋が！」
自衛隊員と男性冒険者は機動隊員をほっぽり出して、口論を始めた。
猟友会が国によって冒険者に昇格してからというもの、彼らは自衛隊に匹敵する兵力を持ち始めていたため、両者の仲はあまり良くはなかった。
自衛隊は冒険者をゲーム脳と言い、冒険者は自衛隊を軍隊モドキと言い合うくらいに、その蔑称が機動隊のみならず、一般人にまで精通するほど定着してしまったのはまた別の話である。
2人に呆れた女性冒険者は、機動隊員に話を聞く。
「で、その冒険者有志の特徴は？」
「わからない……」
「わからない？ 目の前にいたんでしょ？」
「姿がころころと変わった……」
「はぁ？ あんたからかってるの？」
女性冒険者は「きっと突然の事で頭がついてこれてないんだろう」と結論付けた。
続けて他の機動隊員に話を聞く。
「で、あなたは？ どんな感じだったの？ その冒険者は？」
「一人は少年、もう一人は少女……」
「ふーん、で、特徴は？」
「喋った……」
「はぁ？ そんなん当たり前でしょ？」
「モンスターが……喋った……」
「あんたたち、一体何を言ってんのよ？」
わけのわからない事を口にする機動隊員、口論を続ける冒険者と自衛隊のリーダー格、何をすればいいのか分からない下っ端の自衛隊員と冒険者たち。
国会議事堂前は、通常とは異様な雰囲気を醸し出していた。
