第七十四話 考えがある、浅はかすぎる!
「って何だ、この格好!? シェダルのと違い過ぎるだろ!」
下に目をやると、俺は教会の神父のような、司祭のような……とにかく聖職者風の格好になっていた、例によって金色である。
……なんか演歌歌手でこういう人いたな。
「おい昇! それでどうする気だ!」
「まぁ見とけって! いつものイメージでホールを作るのか?」
「そうだが! その前に何をするのか……おい! 前を見ろ!」
シェダルが指をさした先には、汽車のように突撃をするオークの姿があった。
「チャンスだ!」
俺はホールを作り、オークをホールに吸い込んだ。
オークは吸い込まれまいと足に力を入れている。
……オークをホールにって韻を踏んでるな。
「おら! 中に入れ!」
「うぅ……憎い……潰す……」
え!? こいつ喋った!?
「おい! 今こいつなんか喋らなかったか!?」
「なんだ!? 今なにも聞こえんぞ!」
シェダルに話そうとするも、ホールが起こす風の勢いによって、俺の声がかき消されているようだった。
しばらくすると、オークはホールの中に入り、ホールは小さくなり、消えた。
「おい昇! 一体どこに送った!」
「上空だが?」
「は?」
俺の作戦はこうだ。
まず考えたのは、奴は突撃する性質を持っている。
しかし、一度突撃を始めたら止まることは無い。
それを逆手にとって、突撃したところをワープホールに吸い込む。
そして上空に送り、落ちてきたところを追撃する。
これで上空から落ちる力と俺の追撃が加わり、一瞬で倒せるってわけだ!
そんな考えをシェダルに意気揚々と解説した、これで少しは俺の事を……
「馬鹿か! 空気抵抗とかで落下位置が分からなかったら意味がないだろう!」
「あっ……」
やばい! そこんとこ考えてなかった!
どうしよう、周囲は空き地とはいえ、どこに落ちるかもわからない、ましてや一般人がいてそこに運悪く当たったら……
「あぁもう仕方がない! ここはこれだ!」
『飛行スキル!』
俺がそわそわとしている間に、シェダルは鍵を刺したのか、音声が鳴る。
飛行スキル? なんだそりゃ? 飛ぶのか?
「おいおい飛行スキルってなんだよ!」
「いいから行くぞ!」
『スキル解放! 飛びすぎる! 飛行スキル!』
シェダルは鍵を回し、飛行スキル(?)に変身した。
その姿は、まるで神話に出てくる天使のような、白い服装を身にまとっていた。
「お、おい、どうする気だよ!」
「お前が蒔いた種だろう! どうするもこうするもない!」
「うわぁ!?」
シェダルは俺を後ろから抱きかかえた。
後ろを見ると、シェダルの背中から、白鳥のような翼が生えていた。
「さぁ、飛ぶぞ!」
「飛ぶって、これ酔うやつ!?」
「知らん!」
シェダルは足に力を入れ……俺たちは飛んだ。