第七十一話 俺らの名誉、現場へ急行!
「さぁ、キョウリュウダンスはまだかな~」
「シェダル、相当気になるみたいだな、それに」
俺たちは玩具や菓子のCMを見ながら、その踊りを待ち続けた。
すると突然、先ほどまでのアクションマシマシなファンタジー世界とは程遠い、スーツ姿の男性が、カウンターに座る画に変わった。
「おい! なんだこれは!? これがキョウリュウダンスか!?」
「いや、明らかに違うだろこれは」
スーツ姿の男性……キャスターは原稿を準備して、それを読み上げ始めた。
『速報です! 先ほど、国会議事堂前駅から謎のモンスターが現れたとの情報がありました! この影響で、地下鉄線内は一斉運休になった模様です! なおケガ人などの詳細は……』
「モンスター……? 一体どういうことだ!?」
シェダルは一転して、真剣な表情になった。
映像が変わり、一般人がスマホで撮影したであろう映像に切り替わった。
あれは……
「オーク?」
「いや……オークに見えるが、あんなものは見たことが無い」
「え? シェダルも見たことないの?」
「あぁ、これは一体何なんだ!?」
初めて見るシェダルの焦りに、俺も不安な感情を持ってしまった。
『現在このモンスターは、まっすぐと国会議事堂へと向かっています! 付近にいる方は命を守る行動を優先してください! 現在、警察や冒険者ギルド、自衛隊に出動要請が出ました! 繰り返しお伝えします! 命を守る行動を優先してください!』
このようなニュースは既視感があった。
そう、ウトピアとダンジョンが出現したあのニュースだ。
俺は自然とあの時を思い返してしまい、頭を抱えた。
これは夢なのか? もう終わりなのか? 一体俺はどうすれば……
「昇! 現場へ急ぐぞ!」
暗闇から手を差し伸べるように、その声は俺の中で響いた。
この声は……
「……シェダル?」
「いいか昇? あのような得体のしれないモンスターは、この国の公安ではどうにもできない、できるのは、私たちだけだ!」
「俺たち……?」
「そうだ! 我々には腕輪がある! 今こそ鍵スキルの凄さを世に知らしめる時だ!」
世に知らしめる……鍵スキルの凄さを……
そうだ、俺はこの腕輪を受け取って、シェダルと出会って決めたんだ。
『俺はこのスキルでみんなから馬鹿にされてたけど、この腕輪があれば、そいつらを見返すことができる! それに、俺はこのスキル社会を覆したい……その陰謀ってやつも、暴きたい!』
やってやる! 今がそのチャンスだ!
「よし! 行こう! シェダル、転移スキルに変身だ!」
「当然さ! さぁ外へ急ぐぞ!」
「おう!」
俺は、いや、俺たちは鍵スキルの名誉のために、現場へ急行した。