第六十六話 これは何だ? キョウリュウダー!
「ごちそうさま! 叔父さん、もう仕事に行っちゃうから! あとは2人で楽しんでね~」
「いってらっしゃい、卓郎さん」
「あ、いってらっしゃい、叔父さん」
叔父さんはニュースの事を気にも留めず、食器を台所へ持って行った。
そのまま仕事へ行ってしまうらしい、日曜日だが、誰かの鍵が壊れたら真っ先に駆け付けるのが叔父さんだ。
ニュースは未だに、選挙前がどうだの、どこの党がどうだの言っていた。
『お前は将来的に私の後を追うのだ! 何でも余裕にこなせるようになれ!』
『あんな子と遊ぶんじゃありません! あの子は我々とは違う階層の子、あの子と遊んでいると、貴方までそうなってしまいます!』
……嫌なことを思い出してしまった。
「おい昇! どうした? 浮かない顔して」
シェダルが心配そうに俺を見つめる。
そうだ、今の俺はそんなんじゃない。
「なんでもねぇよ!」
「……」
シェダルはまっすぐ俺を見つめる。
……これは。
シェダルが両手を広げたタイミングで、俺は茶碗を持ちながらそれを避ける。
「こら! 逃げるな!」
「別に大丈夫だっての! 抱き着こうとすんな!」
「嬉しいし落ち着くんだろ? 遠慮するな!」
「……」
そんなんじゃない! と言いたかったが、心がそうじゃないと叫ぶので、何も言えなかった。
ここは正当っぽい理由を言おう。
「別にいいよ! 飯食ってんだからやめろよ!」
「食い終わればいいのか?」
「食い終わってもいい!」
「そうか……」
シェダルは下を向いた。
どんだけ抱き着きたいんだよこいつ……
「とにかくチャンネル変えていいか? このニュース飽きたわ」
俺はチャンネルのザッピングボタンを押した、すると切り変わった番組が……
『恐電戦隊! キョウリュウダー! このあとすぐ!』
子ども向け番組だった。
さすがにシェダルはこういう番組は興味ないだろう、自称天才だから「こんな子ども騙しつまらん!」とか何とか言って……
「うおぉ!? 面白そうじゃないか!」
……前言撤回、めちゃくちゃ興味津々だ。
まぁでも、俺もこういう番組は幼少期見られなかったし、他のチャンネルもニュースばっかだから、いいかな。