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第五十八話 走り過ぎる! 突っ込むシェダル!

 すると俺の首元で、鍵が動く感触がした。


『バイクスキル必殺!』


 爆走する中、そんな音声が聞こえる。

俺の手足(車輪)に力が漲る。


「さぁ、突っ切るぞ!」

『お、おう!』


 シェダルは首元の鍵を回した。


『バイクスキル! 走り過ぎフィニッシュ!』


 そんな音声が、ダンジョン内でこだまする。

すると、先ほどよりもかなり早い速度になる。

 まるでロケットが背中に取り付けられたかのような感覚で、体が浮かび上がり、モンスターの腹にめがけて飛び込む。


『うわぁぁぁぁぁ!?』


 気が付くと、地面に着地し、全力でブレーキを掛けたのか、タイヤが擦れる音が、耳鳴りになるくらい鳴り響いた。


「よし! 倒せたな! よくやったな! 昇!」

『モンスターの……内臓が……』


 これ以上は何も言いたくなかった。


 しばらくして、シェダルが降りたのか、乗っかっている感触は消えた。

処理を始めたのか、肉が千切れる音が聞こえる、聞くだけでエグい……

処理を終えたのか、再び背中に感触がして、再び走り始めた。


 しばらくすると、目の前には……


『これは……』

「ほう、これが第三階層への入り口か」


 シェダルは俺から降りたのか、感触が消えた。

そして、門の前の黒い背景に黄色い文字の看板を凝視していた。


「なになに? 『危険! この先第三階層! 許可を受けた冒険者、自衛隊員以外立ち入り禁止』……偉そうな看板だな!」


 シェダルは看板に対して罵倒した。


『なぁ、早く戻ろうぜ?』

「……」

『おい、シェダル?』

「ふふふふ……」

『まさか……お前……』


 シェダルは不気味な笑みを浮かべ、鍵スキルに変身した。

銀色のコート姿が今は怖く見える。


『お前それでどうする気だよ!?』

「昇よ、お前は我々のスキルが何なのか忘れてないか?」

『そりゃ鍵スキル……まさか!』

「そのまさかだ!」


 シェダルは持っていたドライバーの先端を門に触れさせた。

すると、許可証を提示したわけでもないのに、門が開いた。


『おいお前! まさか俺をバイクスキルにしたのは……』

「ふふふふ……さぁ! 冒険の始まりさ!」

『おい! お前! 降りろ!』


 抵抗しようとしたが、今の俺にはできなかった。

シェダルは俺の制止の声を華麗にスルーし、ギアを入れ、走り始めた。


『おいシェダル! やめろぉぉぉ!!』


 第三階層の入り口に、俺の叫びがこだました。


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