第五十三話 俺は子ども、再び眠ろう!
「あのさ! シェダル!」
「なんだ?」
「抱き着いたり、一緒に風呂入ったり……いい加減、俺の事子どもみたいにするなよ」
「何故だ?」
「その……」
……うん、ダメだ、理由を説明しようにも、いざ口で言うと恥ずかしい。
シェダルは曲がりなりにも俺より10倍も長く生きてるわけで、戦闘能力も圧倒的に高い、言ったら何をされるか……からかわれるだけかもしれないが。
それに、言葉では否定しても、心は求めているという矛盾が壁になっていて、うまいこと言えない。
「ははは! 恥ずかしくて、これ以上やられると、理性が持たなくて襲い掛かるかもしれないってか!」
「ば、馬鹿! そんなんじゃねぇよ!」
「ははは! 顔にそう書いてあるぞ!」
分かってんならやるんじゃねぇよ!
そう言い返したかった。
「大丈夫だ、お前はそんな事をするような人間じゃない」
「……どうしてそう言い切れるんだよ? 会ってまだ一日ちょっとしか経ってないのに」
「私の父の言葉を借りると……『目を見れば分かる』」
「……」
感情論じゃないか、全く……。
「お前は私を襲う勇気なんて無さそうだし、仮にそうなっても、抵抗する力ならお前より上だ!」
「……そうだけど」
事実は事実だ。
「それにだ! 私は子どもには興味はないからな! ははは! お前は私の息子みたいなものだ!」
「息子ねぇ……」
なんか、今まで何を考えていたのだろう。
理性とかなんとか、欲望に忠実すぎるだろ、俺。
目覚めて早々、変なことを考える俺を、できる事なら殴ってほしい。
「あの……申し訳ない」
「なぜお前が謝る?」
「……色々と」
「色々とは?」
シェダルは未だにニヤニヤとしているようだった、話し方がそれっぽい。
俺はシェダルを突き放そうとした。
「いい加減放せよ!」
「お前まだ目覚めたばかりだろう! まだ横になってろ!」
「寝るなら一人で寝てるから!」
「おーよしよし、ママが近くにいてやるから安心しろ」
こいつ……放す気がねぇ……
「つーか思うんだが、密着するんだよ毎回!」
「人間は相手の体温を感じると落ち着くんだろう?」
「……あーわかったよ!」
「よしよし、いい子だなー」
「……」
からかっているのか、はたまた俺の事を思って言っているのか。
この際どちらでもいいか。
俺は自分の気持ちに正直になり、そのまま再び眠りについた。