閑話 少年の過去 中編3
『おお! 俺スキル剣だ! なんかかっこいい!』
『私のスキル弓だって!』
『僕は魔法だ!』
皆、自分のスキルに一喜一憂していた。
剣……? 弓……? 魔法……?
それに対して俺は鍵、意味が分からなかった。
俺が困惑している中、担任は「それはみなさんのスキルです、レベルですが、善行を積んだり、誰かの役に立てば上がります!」と言っていた。
そして、今までのツケを支払うかのように、他の連中が俺をからかいにやってきた。
まず一人が、俺の携帯を奪い取って、みんなに見せびらかした。
返せと言ったが、聞く耳を持たず、皆に言いふらした。
すると、他のクラスの奴が俺の所へ来た、記憶にはないが、恐らく過去に俺が馬鹿にした相手だった。
『お前鍵スキルなんだって?』
『いずれは父さんの後を継ぐんじゃなかったか? ははは!』
『その父さんもいなくなって、可哀そうな奴だなぁ』
俺は腹が立ち、そいつに暴行を振るったらしい。
らしいというのは、その時の記憶が無いのだ。
俺は両親が死んでからは、一時的に児童養護施設……一昔前の言い方で、孤児院に預けられた。
俺はそこの職員に怒鳴られていた
『昇くん! なんでそんなことをしたの!』
そんな事を言っていた。
俺は正直に言った。
『あいつ、父さんの悪口を言ったんです、俺はそいつの事……昔は住む世界が違うとか何とか言って馬鹿にしたことがあって、その仕返しをされて……』
そう言うと、職員はこんなことを言った。
『あなた……いつも調子に乗っているからそうなるんでしょ!』
事実だった、だが、その時の俺に、その言葉は心に刺さった。
まるで針山に刺されたような感覚になった俺は、我を忘れた。
『お前まで……』
『なんですか!?』
『お前までそんなこと言うのか!』
俺は職員に暴行を振るおうとして……取り押さえられたらしい、例によって、その時の記憶はない。
俺はその後、抜け殻のように生きていった。
中学はエスカレーターで系列校へ上がったが、途中で普通の中学へ編入した。
そんな時、養護施設へ戻ると、一人の男性が出迎えてきた。
『君が……方丈 昇くん?』
俺は小さく頷いた。
『あぁ……突然で驚いちゃうよね、ごめんごめん。』
男性は笑顔で俺を見つめていた。
しかし当時の俺には、何の感情もわかなかった。
『僕は「金剛 卓郎」って言うんだ、君のお母さんの弟! つまり僕は君の叔父さんだよ! 会ったことなかったよね? 君のお母さんが「あんたなんかに会わせたら、昇が汚れる!」とか何とか言って、僕の事を拒絶しててね、ははは……』
俺は男性の言っていることを無心で聞いていた。
『……そんな人が、こんなところへ何しに?』
『あぁ、そうだったね! 叔父さんは君の事を引き取りに来たんだ!』
『引き取りに……?』
『そう!』