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第五十一話 シェダルは凄い、今は寝たい!

「す、すごい……」


 思わずそんな言葉が出るほど、美しい戦闘だった。

すると、シェダルは俺の方を振り向いて、目の前で仁王立ちした。


「昇! ダメじゃないか! 奴は他のゴブリンよりも頭がいい! 弓スキルを使うと逆に不利になるぞ! 隙を見て近接攻撃で行け! 分かったな!?」

「あ、あぁ……」

「さぁほら」


 シェダルは、俺に手を差し伸べてきた。

俺は無意識にそれに答えようとした。

 ……だめだな、俺、何が見返してやるだよ、結局はシェダルに介護されてんじゃねぇか。

そう考えながら、シェダルの手を掴んだ。


「うわぁ!? いきなりなんだよ!?」


 シェダルは硬い装甲に身を包んだ自身の体を俺に密着してきた。

 風呂場の時とは違い、胸部も固く身を包んでいたためか、以前よりも違うぬくもりが……って何考えてるんだ俺は。


「よく頑張ったな」

「あ、あぁ……ありがとう」


 シェダルは俺がレベルをカミングアウトした時もこうやってくれたが、彼女なりの好意なのか、癖なのか。

でも悪い感じはしなかった。


「な、なんで抱きしめるんだよ?」


 咄嗟に口に出てしまった。


「不慣れな戦闘で、ストレスが溜まっていると思ってな、もしかして……甲冑が冷たいか?」

「いや、その……」


 嬉しくなくはないが、なんというか……

今、複雑なことを考えていた俺にとっては、必要だったのかもしれない。


「つーかお前! 血まみれだろ!」

「あ、そうだった、すまん」

「……」

「ははは! また顔が真っ赤じゃないか!」


 いつものシェダルの笑顔、先ほどまでの真剣な表情までとのギャップに、俺は何も言えなかった。

 危なかった……興奮で鼻血が出そうだった……


「それじゃ、処理して、さらに奥へ……」

「おいおい、この先は第三階層だろ?」

「そうだが?」

「多分、規制が張られてるだろ」

 

 第三階層は、許可を受けた冒険者か自衛隊しか入れない。

 そこに至るまでのモンスターは一般人でも、ある程度のレベルがあれば対処できるから……と政府は言っているそうだが、それに対しての反対意見も根強い。

 お上曰く、先ほどまでのゴブリンも、俺みたいな貧弱な野郎じゃなければ対処できる……らしい。


「そうなのか? 大丈夫だって、さぁ行くぞ!」

「全然大丈夫じゃないから! って、あれ……?」


 突然眠気のような、目眩のような、そんな現象が起きた。

 視界が狭まり、ついその場で横になってしまいそうな感覚に陥った。


「お、おい! 大丈夫か!?」

「あぁ……大丈夫……」

「全然大丈夫じゃないだろう!」

「このくらい平気だって……」

「いったん戻るぞ!」

「え……ちょっと……あれ……?」


 シェダルは転移スキルの鍵を取り出したかのように見えた。

 なぜそんな表現を用いたかといえば、この時すでに、俺は深い眠りのようなものについていたからだった。


「お、おい! 昇! 昇! しっかりしろ!」


 そんな声が聞こえたような気がするが、今は一刻も早く、寝たかった。


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