第四十八話 水を出す、しょぼすぎる!
『スキル解放! 唱えすぎる! 魔法スキル!』
鍵を回し、俺は魔法スキルに変身した。
「えぇ!? なになに!? 金剛くん!?」
「すげぇ! 一瞬で姿が……」
「なんでもいい! 行け! 金剛!」
「……!」
「忘れるな! あの蜂の弱点は水だ!」
「……おう!」
四人中3人が俺に対して何か言っているようだが、俺はシェダルの指示で、それを聞く隙が無かった。
「なんかシェダルちゃん、彼女って言うより先生みたい! かっこいい!」
羽田はシェダルを褒めた。
だがこの後、俺の事も称賛するだろう、「やばい! 金剛くんすごい!」ってな感じで。
シェダルが火あぶりになった俺を消化しているときのことを思い出し、杖から大量の水が噴き出る様をイメージする。
杖から水……杖から水……水!
「いけぇ!!」
出た水は……シェダルのように滝行クラスではなく、蛇口から出る水レベルだった
「……しょぼ!」
羽田は俺に対して言った。
悪かったな! しょぼくて!
だが、水自体は効いているのか、メガルホーネットの動きは鈍くなっていった。
「昇! ちゃんとイメージしろ!」
「あ、あぁ!」
俺ならできるぞ! 滝のようにデカい水を出せるぞ!
イメージしろ! イメージしろ!
「今度こそいけ!」
杖から滝の如く大量の水が出た。
それが、メガルホーネットの真上に降り注ぎ、それまで浮いていた巨大な蜂は、地面に叩きつけられた。
「よし! あとは任せろ!」
「我が岩国薫の名において……この蜂を氷に変えよ……アイスバーン!」
岩国がメガルホーネットを氷漬けにし、小松が俺の先頭に出た。
おい! 邪魔すんじゃねぇ!
「お、俺も!」
「じゃあ2人でいくぞ! 愁!」
「おうよ!」
陽キャ2人組は先頭に出て、持っていた剣と鎚でとどめを刺した。
クソ、美味しいところ持って行きやがった。
「っしゃあ! やったぞ愁!」
「おう!」
2人はハイタッチした。
「金剛も! ありがとな!」
「金剛! いつのまにこんなことできたのか!?」
小松と三沢が俺に駆け寄ってきた。
小松は「ハイタッチだ」という要領で、俺に手を差し伸べた。
こいつ……ようやっと俺の事を認めたか? 本当にムカつく奴だ。