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第四話 抗議デモ、ここでも

 それから一週間、ダンジョン探索がいよいよ本格的に始まる。


 朝食を食べ、歯を磨き、リュックと剣を持って行く準備をした。


「いってらっしゃい、気を付けるんだよ!」


 エプロンをした叔父さんが、店の玄関前でそう言って出迎えた。

 普通ならば、行ってきますとか言うべきなんだろうが、この間の夢が気になって、頷くことしかできなかった。


 いつもの通学路を歩く。

 毎日のことなのに、今日はやけにそわそわする。

 不安なのだろうか、それとも無気力故に何をしたいのか分からないのか。

 いろんなことを考えていると、「スキル社会は、いーらない!」というコールが聞こえた。

 目をやると、駅のバスターミナルの前で「スキル社会は格差社会」「スマホの所持義務化は政府の陰謀」「ウトピアの奴らの言いなりになるな」「ダンジョン探索の授業は現代の竹槍訓練」といった横断幕を掲げた集団がいた。

 まるでコンサート会場でミュージシャンが客を煽るかのように言ったその声に同調するように、同じ言葉を発言者の周りにいる拡声器を持った集団が言った。


「いいですか! 皆さんは監視されているのです! この忌々しい携帯電話とステータスアプリによって! 政府は携帯電話を使って我々の行動を逐一監視しています! これは監視社会と言わずに何と言えるでしょうか!」

「スキル社会はウトピアの陰謀です! ウトピアは我が国を傀儡国家にしようとしている!

スキルをつけて我々を管理しやすくしているのです! これのおかげで子どもたちはなりたい職業に就けないのです!」

「ダンジョン探索の授業を強行採決した政府に反対します! この授業を行うことで子どもたちの身に危険が起きたらどう責任を取るつもりなのでしょうか!?」

「冒険者ギルドは、お金のない貧困層を積極的に入れて、その結果多くの命が奪われています! 果たしてダンジョンに一般人を入れるべきなのでしょうか!?」


 この他、「スキル社会撲滅!」「政府は子どもをダンジョンに送って将来的に戦争に駆り出そうとしている!」「政府の独裁を許すな!」こう言った主義主張が繰り出された。

 ……概ね言っていることは正しいと俺は思う、無意識のうちにそれに同情した俺はその集団の前に行き、聞き入ってしまった。

 だが彼らの主張をよく思わなかったのか、主張の中にこんな声が入り混じった。


「スキル社会から外れた負け犬は引っ込んでろ!」

「反スキル主義者はタイムマシンで過去に行ってダラダラと過ごしてたらどうだ!?」

「具体的にどこと戦争するのか言ってみろ!」

「アルミホイルでも巻いて家に閉じこもってろ! この陰謀論者ども!」


 彼らの敵対集団だろうか? 横断幕と比べるとはるかに小さい紙を挙げて妨害しに来たようだ。

 小さな紙には、「反スキル主義に反対!」「スキル社会は我々の救いの手」「ダンジョン探索は集団行動の一環」「ウトピアと我が国は良き友人」と書かれていた。

 すかさず警戒していた警察官が押さえつける

 すると反対していた集団の誰かが靴を投げた。

 これを決闘の申し込みだと認識したのであろう、両者に火花が散り、現場は大混乱となった。

 集団の話を聞いていた野次馬たちは、その場をそそくさと去る者と、怖いもの見たさに距離をとる者、携帯のカメラで録画する者と三者三葉の姿が見れた。

 俺はどの分類に入るかと言われると、言わずもがな、一番最初だ。

 急いで学校へ向かうことにした。


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