第四十二話 炎の魔法、杖から炎!
「あった!」
俺は持ち手が球体の鍵をようやく取り出し、腕輪に嵌めた。
『魔法スキル!』
ロックのような待機音楽がダンジョン内にこだまし、今ダンジョン内は、俺というギタリストがスライムという観客に対して爆音を鳴り響かせているような状態になった。
そして最初の変身時のように、俺は掛け声を言った。
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 唱えすぎる! 魔法スキル!』
俺の体が光を放ち、付着していたスライムの体の一部が床に落ちる。
スライムの体から反射して見えた俺は、ぶかぶかのローブに身を包み、長袖長ズボンという、これまた西洋風の格好をしていた。
右手には金色の水晶のついた杖を持っていた。
そして例によって……
「また金髪かよ!?」
「だから金は美しいだろう!」
金銀どんだけ好きなんだ、こいつは……
「というか俺、呪文も何も知らないんだけど!」
「大丈夫だ、腕輪なら無詠唱で構わん!」
「無詠唱!? 詠唱せずにどうやってやりゃあいいんだよ! つーか腕輪からは『唱えすぎる!』って音声が流れるのに唱えないっておかしいだろ!」
「すまん、魔法といえば詠唱しか思いつかなくてな。」
「はぁ!?」
ウトピア出現により、冒険者ギルドが魔法スキル保有者向けに魔法を教えているというのは聞いている。
たが聞いた話では、普通、魔法は詠唱で出すものである。
岩国も呪文を詠唱して炎を出したり、モンスターを凍らせたりしていた。
「とにかく、転移スキルと同じだ! イメージしろ!」
「はぁ!? だからイメージって意味わかんねぇよ!」
「ほら! 前見ろ!」
「うわぁ!」
またも、スライムが俺に襲い掛かる。
えぇい! イメージすりゃいいんだろ! どうにでもなれ!
えぇ~と……炎……炎……炎!
「うおおおおおおおおおお!!」
俺の体が洋画でスタントマンが火あぶりになるかの如く、全身が炎に包まれた。
すると、俺の体に巻き付いていたスライムが解け始めた。
……ていうか、この状態。
「あっちゃああああああああああああ!! あちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃっちゃああああああああああああ!! 熱い! 熱い!」
めちゃくちゃ熱い! やばい! 死ぬ!
すると滝行の如く、大量の水が頭から降ってくる。
「ぶるるるるるるるるぁぁぁぁ!?」
突然の出来事に、謎の奇声を発してしまった。
とりあえず何とかはなったが、もう全身水まみれだった。
後ろを振り向くと、シェダルが魔女っ娘のような姿になっていて、持っていた杖からは水を出した後だろうか? 水滴が垂れていた。
「うむ、初めてにしては上出来だ、だが次は全身じゃなくて杖から出すようにイメージしろ!」
「それを先に言えよ!」
まぁでも、イメージしろという指示に馬鹿正直に従った俺も俺だが……
「さぁ、さっき言った通りやってみて、残りのスライムも燃やし尽くせ!」
「お、おう!」
ええっと、杖から炎……杖から炎……杖から炎!
「いけぇ!」