第三十九話 安息の地、スキルチェンジ!
「……まぁいい、それじゃ、行くか!」
「またそれかよ……」
シェダルは腰に巻いていたケースから、転移スキルの鍵を取り出した。
頼むから勘弁してくれ、と言うように、俺は下を向いた。
「仕方がないだろう! ダンジョンへ行く手っ取り早い方法はこれだ! それともなんだ? 公共交通機関を使っていくのか?」
「……わかったよ!」
俺は覚悟を決めた。
『移りたすぎる! 転移スキル!』
例によって音楽と音声が鳴り、シェダルは転移スキルに変身した。
「酔うなら目を瞑ってろ!」
シェダルは転移ホールを作った。
「あーわかったよ! って……」
そして、シェダルは俺を学校に送った時のように、お姫様抱っこをしだした。
「さ、行くぞ!」
「なんでこの体制!? つーかなんで俺が抱えられる方なんだよ!?」
「あぁもう! ごちゃごちゃとうるさい!」
俺はシェダルのお姫様となり、転移ホールの中へと入った。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
◇
「それ到着だ!」
「おぇ……」
「おい! ここで吐くな!」
次は酔い止め薬を叔父さんに貰おう……
俺は足から着地した。
ここは……
「安息の地の神殿か?」
最初に腕輪を取った聖堂に着いていた。
「うむ! さ、準備をして行こうではないか! 昇!」
シェダルは転移スキルの鍵を抜いて……普通の鍵を出した。
そして、急に両手で反時計回りに円を作り、腕を十字にしてこう言った。
「スキルチェンジ!」
……は?
「なんだその一連の流れは?」
「気合を入れるためだ」
「お、おう……」
その鍵を自分の腕輪に刺した。
『鍵スキル!』
音声の後、腕輪からダンスミュージックが流れる。
静粛に包まれた聖堂内は、突破としてディスコ会場のようになった。
そして、シェダルは、そんな中で鍵を回した。
『スキル解放! 凄すぎる! 鍵スキル!』
シェダルは自身の体格に合わない銀色のコートを着た姿になった。
そして、左手にドライバーのような槍を装備していた。
「何気にシェダルの鍵スキル初めて見た」
「そういえばそうだった。」
「俺の色違いじゃん」
「そうだろう? かっこいいだろう?」
「まぁ……否定はしないけど」
「さ、お前も変身しろ!」
「あ、あぁ……」
俺は言われたとおりにやろうとしたその時。
「あぁ~だめだ! お前も気合入れるためにポーズを決めないか!」
「はぁ?」
あんな恥ずかしいポーズと掛け声を俺もやれと?
「気合を入れなきゃ、この先死ぬぞ!」
「そんな大袈裟な……」
「いいからやれ!」
「わかったよ」
どんな拘りだよ……まぁ、やってみるか。
シェダルと被るのもアレだったので、俺は両手で時計回りに円を描き、ガッツポーズみたいなのを決めた。
「ス、スキルチェンジ!」
実際言うとやはり恥ずかしい。
『鍵スキル!』
『スキル解放! 凄すぎる! 鍵スキル!』
俺は鍵スキルの姿になった。
「な? 気合入るだろ?」
「……よくわからん」
こんなんで気合が入るものか? いずれわかるのだろうか?
「さぁ行こう!」
「お、おう!」
俺たちはダンジョンへ向かうため、走った。