第三十八話 笑みが出る、外に出る
「すまんな……辛かったろう……」
「お、おい……」
「鍵スキルは善行を積むのが難しいし……モンスターを倒すのも一苦労だ……腕輪を持つ前の私もそうだった……すまんな……」
「泣くなって……」
シェダルは150歳の大人とは思えないくらい泣き始めた。
……シェダルも苦労してたのかな? というか、シェダルの体、暖かい。
あぁ! もう!
「あ、ありがとな、そして……俺もすまん、シェダルの事疑ってて……」
「疑う?」
「いやあの、きっと俺のレベルを聞いたら笑うかなって勝手に思い込んでて……」
「なんだ? 人聞きの悪い奴だな!」
「あ、ご、ごめん……」
「ふふふ……」
シェダルの涙が引っ込み、笑顔を見せた。
やっぱりシェダルはこの笑顔が似合う……ってさっきから俺、いやらしい事考えすぎだ。
「だが! 今はその腕輪でレベル上げも容易い筈だ! さぁ! ダンジョンへ行こう!」
「えぇ……」
「安心しろ! 何かあったら私がサポートしてやるから!」
「……」
確かにシェダルは頼もしいとは思うけど……
「そうと決まれば、早速行こう!」
「うわぁ!? 引っ張るなよ!」
シェダルと俺は部屋を出て、玄関に向かった。
「あ、昇くん! シェダルちゃん! もう行くの?」
玄関前で叔父さんが風呂敷を持って迎えてきた。
「はいこれ、頼まれたお弁当。」
「ありがとうございます、卓郎さん」
「それから昇くん!」
「何?」
「ちょっとこっち来て」
「?」
またなんかあるのか? 勘弁してほしい。
例によってシェダルに背を向けて、小声で話しかけてきた。
「ねぇねぇ昇くん、デートだから多分遅くなるよね?」
「はぁ?」
「もう! 察しが悪いんだから、遅くなるということは……」
「……」
こいつ、ただのエロオヤジじゃねぇか。
「昇くん! 遅くなるのはいいけど、ちゃんと連絡してね! あと、優しくするんだよ!」
「そんなことやらねぇよ!」
俺は叔父さんの手を払いのけて玄関へ再度向かった。
……全く、聞いてられん、ちょっと恥ずかしいし。
「じゃあ、叔父さん! この後仕事あるから家にいないよ! 気を付けてね! 2人とも!」
「はい!」
「行ってきます、叔父さん。」
俺たちは靴を履き、外に出た。
「……なぁ、卓郎さんと何を話してたんだ?」
「……なんでもねぇよ!」
恥ずかしくなって、顔を隠した。