第三百二十三話 大学行きたい? ランクじゃない!
「叔父さん、退院できて本当に良かったよ」
「ありがとう、昇くん! ……シェダルちゃんは?」
「……昨日久々に酒飲んでダウンしてる」
「あぁー……」
皆と解散した後、俺は叔父さんを迎えに病院へと向かった。
叔父さんは……やっぱり昨日と同様、元気そうだった。
「じゃ、帰ろうか」
「……うん」
……なんというか、叔父さんと2人きりって、凄い久々感がある。
シェダルが鍵屋に来てから、3人で話すことの方が多かったし……。
「昇くん」
「何? 叔父さん」
歩きながら、叔父さんが俺に話しかけてくる。
その口調は、かなり真剣な感じだった。
「昇くん……なんか悩んでる?」
「……」
やはり、叔父さんにはそういうところはお見通しのようだった。
俺は叔父さんに将来どうするべきか、何がしたいのか分からない、というような話を展開した。
「なるほどねぇ……確かに、昇くんくらいの年齢だと、そういうところ悩んじゃうよね」
「うん、俺、別に冒険者って言うのも興味無いし、大学と言っても……いい大学に行けなきゃ、意味が無い気がするんだ」
「いい大学ねぇ……」
叔父さんは、立ち止まり、俺と視線を合わせた。
「いいかい、昇くん。大学っていうのはランクじゃない」
「……叔父さん?」
叔父さんは、まるで俺を叱りつけている時のような口調になる。
……まぁ、落ち着いている感じではあるけど。
「叔父さんの考える大学はね……『好きな事を見つけるまでの保険期間』なんだ」
「……どういうこと?」
好きな事を見つけるまでの……保険期間?
「叔父さんはね、料理を極めたいって目標があった……それは好きな事だったからなんだ。だから、すぐに叔父さんは行動に移した」
「……」
「でも昇くんには、そういうのがまだ見つかっていない……なら、それを見つけるために、大学で勉強したり、視野を広げたりした方が良い……そう思うんだ」
「……」
なんだろう……叔父さんの口調から、なんとなく説得力がある。
「まぁ勿論、昇くんがどうしても頭のいい大学に行きたいって言うなら、叔父さんは応援するけどね!」
「……叔父さん」
叔父さんはいつものような笑顔を俺に見せてくれた。
いい大学か……冷静に考えると、俺がそこに進んだとして、果たしてついて行けるのだろうか?
高校もあんま行ってないし……。
「さ、家に帰ってご飯食べよ! 今日は久々にチンジャオロース作ってあげるからね!」
「う、うん!」
「そういえば昇くん! シェダルちゃんとの時間は楽しかった?」
「い、いきなり何!?」
俺は叔父さんに引っ張られ、鍵屋へと戻った。




