第三百二十話 この先どうする? とりあえず寝る
「はぁ……はぁ……」
やっと着いた……ぶっちゃけ言うとダンジョンよりもキツイ……。
人一人抱えてどこかへ運ぶってめちゃくちゃキツイな……シェダルはどうやって俺を抱えていられたんだ?
とりあえず……シェダルをベッドまで運ぼう……。
「はぁ……はぁ……階段……キッツイ……」
なんとか力を振り絞り、シェダルの部屋まで着いた。
「おい、シェダル!」
「……んん」
「……ダメだこりゃ」
シェダルは俺の首から腕を退けなかった。
これじゃあ動くに動けない……。
「……仕方がない」
……このまま寝るしかないか、凄い緊張するけど。
というか理性が崩れないか不安だ……。
ダンジョンで何度も添い寝をしていたが、アレはシェダルが普通の状態であったからであって、酒に酔って無防備なシェダルを襲いそうで……なんか自分が怖い。
「……昇ぅ」
「……何!?」
「……頑張れぇ……私はぁ……」
「……」
……寝言かよ、驚かせやがって。
……頑張れ、か。
俺は今日剣さんに言われたことを振り返った。
将来……どうしようか?
剣さんの言う通り、俺のスキルで雇ってくれる企業は果たしてあるのだろうか?
レベルは300近くあるものの、俺を雇うくらいなら、定番のスキルかつレベルがそこそこの奴を雇うと思う……。
叔父さんの鍵屋を継ぐ手段もあるけど……正直鍵屋の事よく分からないし……。
……叔父さん、いつ退院するかな。
もしも、叔父さんが亡くなったら……鍵屋の顧客はどうなるのだろうか?
叔父さんは普通の鍵屋にしては仕事をよくしている。
ということは、そのくらい信頼があると言う事だ。
俺は……そんな存在になれるのだろうか?
「昇ぅ……どこ触っているんだぁ……」
「……は?」
色々と不安になっている俺に、シェダルは意味不明な寝言を囁いた。
一体どういう夢を見ているんだこいつは……。
……なんか馬鹿らしくなってきた、寝よう……。
「……おやすみ」
◇
「あぁ……久々に酒を飲んだものだから頭が……」
「……調子に乗るからだよ」
次の日、起きると、シェダルは既に起きていて、唸り声を上げていた。
どうやらシェダルは普段酒を飲まないらしいが、昨日は調子に乗ってたくさん飲んだらしい。
「いや、すまない昇……」
「いいよ別に……俺の方こそすまん……」
「……どういうことだ?」
「いや……なんでも……」
……酒に酔ったお前に欲情してたなんて、口が裂けても言えない。
「……申し訳ないが私は今一度寝る……今日は卓郎さんが退院する日だが……頭が痛い……寝る……」
「そうしたほうがいい……」
シェダルは再びベッドへと潜った。
今日は叔父さんが退院する日だ、午後に迎えに行かないと……。
……んじゃ、とりあえず俺は風呂入って飯でも食うか。