第三百十九話 酔っている、おんぶする
「おいシェダル! 帰るぞ!」
「嫌だ~……私はここにいるぅ~」
「何言ってんだ!」
祝賀会がお開きとなり、解散となった……が、シェダルが完全に出来上がっていて、帰るに帰れない。
剣さんたちは、そのまま飲み続けるらしく、二次会ということで会場を放置してどこかへ行ってしまった。
……全く、酔っ払いってめんどくさいな。
「ほらシェダル! 転移スキルの鍵を出して!」
「えぇ~めんどくさいからお前が出してくれぇ~」
「はいはい……」
俺はシェダルのケースから鍵を出そうとした……が。
「こらぁ! 女の身体を気安く触るんじゃなぁい! この変態がぁ!」
「お前が鍵を取れって言ったんだろうが!!」
全く……あぁもうめんどくせぇ!
「ほら行くぞ!」
「なんだぁ~私は~天才だぞぉ~」
「はいはいそうですね、ほら、おんぶしてやるから」
「うぃ~」
シェダルが俺の背中に圧し掛かる……なんだろう、ダンジョンの時と立ち位置が逆で、凄い新鮮に感じる。
なんだろうか……シェダルの体温だけではなく、心臓の音や吐息も伝わる……酒臭いけど。
体温は、酒が入っているせいか、やけどをするくらい熱い……無論本当にやけどをするくらいではないが。
「好きな女をおんぶできるなんて幸せ者だなぁ~喜べぇ~」
「う、うるせぇ……」
「私を雑に扱ったらお前をぶん殴ってやるからなぁ~」
「そんな事しねぇよ! ……行くぞ」
俺はシェダルを抱え、冒険者ギルドを出た。
なんだろう……外に出るとなんか恥ずかしいな。
辺りはすっかり真っ暗だった……既に帰宅ラッシュは終わった故に人通りもあまり多くない。
……人通りは少ないが、やっぱりちょっと恥ずかしい、面倒だが、シェダルに降りてもらって……。
「うぃ~お前の身体ぁ~……暖かい……」
「い、いきなりなんだよ……」
シェダルが耳元で囁いてくる。
俺はビビッてしまった。
「なんだぁ~? 恥ずかしいのかぁ~?」
「あ、当たり前だろ!」
「ふぅ~」
「い、いきなりなんだよ!?」
シェダルが恥ずかしがっている俺の耳に吐息を掛ける……酒臭い……。
「……なんか……お前の背中……心地がいい……」
「……シェダル?」
「ふぁ~……なんか……目が……」
……なんてこった、シェダルが寝てしまった。
仕方がない……このまま家まで運ぶか……。
……つーかやっぱり恥ずかしいな。
俺は無防備なシェダルを抱えている……いやらしい妄想をしてしまう自分が情けない……。
俺はそんな自分を罵りながら、鍵屋までシェダルを抱えた。