第三百十一話 南国ビーチ、馬鹿じゃない!
「こ、これは……」
そこは、大きな海岸だった。
南国の観光地のような海岸……鴎の鳴き声が聞こえたらそれだと勘違いしそうだ。
「なんだこれ……安息の地と同じ魔法か?」
「そうだな、魔王ゆえに、このくらいの魔法はお手の物なのだろう」
「でもなんで海岸?」
「スライムは元より水気がある場所を好む、故にこのような土地が過ごしやすいのだろう……大方、ダンジョンに入った冒険者の記憶から抜き取ったとかじゃないか? そういう魔法もあるし」
「な、なるほど……」
なんとなく……納得はできるかな。
「んで、魔王は一体どこに……」
「……探すか」
「あぁ」
俺たちは魔王の捜索を始める。
……にしても、綺麗な海だ、テレビで見る海外のビーチのようだった。
ここがダンジョンじゃないと言われたら、海パンになって泳ぎたいくらいだ。
「なんだ? 泳ぎたいのか?」
「いや、例えばの話だよ」
「いやいや、ちょうど私も5年ぶりに泳ぎたいと思っていたところだ、どれ、いつの日か、一緒に海にでも行こう!」
「海ねぇ……」
全く、呑気だな。
まぁ、倒す相手がどこにもいないから仕方が無いよな……。
「……昇!」
「え、何!?」
「……いたぞ」
「……え?」
俺たちの目線の先にいた者。
それは……10歳くらいの少年に見えた。
大きなローブに身を包んだ褐色肌の少年、俺にはそう見えた。
少年は、海の水を救っては戻す行動を繰り返しているように見える。
「あれが……魔王? 普通の男の子に見えるけど? というかなんでこんな所に男の子が?」
「間違いない、あいつが魔王だ」
「……どうしてそう言える?」
「よく見ろ、奴は手で海水を吸収している、スライムは体全体で水を吸収することができる……奴は間違いなくそうだ」
確かに、よく見ると、少年の行動はそういう風にも見えた。
どうしよう……スライムの化け物を想像していたから、なんか拍子抜けする。
「どうする? 昇?」
「……行こう、シェダル」
「おいおい、ここはひっそりとやったほうが……」
「俺は……正々堂々と戦って、倒したいんだ」
そうだ、あんな見た目の魔王を不意打ちなんて真似で倒すのは何か……嫌だ。
感情論かもしれないが、そのように感じる。
「全く……仕方がないな……」
シェダルが俺の考えに同意してくれ、俺たちは少年……魔王の元へと歩き始めた。
少年はこちらに向かっている俺たちに気が付いたのか、こちらを振り向いた。
「なーんだ、てっきり不意打ちしかけてくるのかと思ってたよ、流石にそんな汚い真似はしないんだね」
「え!? しゃ……喋った!?」
いやまぁ……少年の見た目をしているから当たり前なのかもしれないが、仮にも相手モンスターだぞ!? マジかよ!?
「わ、私も驚きだ……喋れるのか!?」
「そりゃそうだよ、僕は馬鹿じゃないからね」
シェダルも魔王が喋ることができるのは初耳のようだった。
ど、どうなってるんだ……。
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最終話まで書き溜め終わりました、ここからペース上げていきます。
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