第三十六話 朝の紅茶、早食いはダメだ
ダンジョン探索、安息の地での出来事、新たなる力、新たなる同居人、そしてその同居人と一緒に食事と風呂……
濃すぎる一日を終えて次の日の朝……土曜日
「ふぁ~……6時30分か……」
スマホを見ると、普段学校に行く日よりも1時間くらい早く起きてしまったようだ。
昨夜、ベッドに入るや否や、俺はぐっすりと眠ってしまったようで、その影響で珍しく早めに起きてしまったようだ。
着替えて、下で朝ごはんでも食べよう……
◇
「おはよう! 昇くん!」
「やぁおはよう! 昇」
「……おはよう」
居間に入ると、叔父さんとシェダルが、紅茶片手にトーストを食べていた。
「あ、昇くんの分も用意するね!」
「あ、ありがとう……」
叔父さんはもう一枚焼くために台所へ向かった。
「ほら、お前の紅茶だ」
「ありがとう」
シェダルは既にこの家に馴染んだのだろうか?
叔父さんとそれまでに談笑していたように思えた。
「はい! 昇くんのトースト!」
「ありがとう、叔父さん」
「いやぁ、シェダルちゃんの紅茶美味しいねぇ! 普段緑茶ばっかり飲んでるんだけどこれからは紅茶にしようかな?」
「あら、ありがとうございます、卓郎さん」
確かに、シェダルの淹れる紅茶は美味い。
初めて安息の地で飲んだ時も、叔父さんと似たような感想を俺は抱いた。
ウトピアの紅茶は、本場と言われているイギリスと似たような感じなのだろうか?
そのくらい、美味しい。
「いやぁ、仮にシェダルちゃんが昇くんと結婚したら、死ぬまでこれが飲めるのかな?」
「!?」
思わず紅茶を吹き出しそうになった。
そういえば付き合ってる設定だったことを、すっかり忘れていた。
あまりに突然すぎる発言……予想もしていなかった。
「ちょっと叔父さん! それ半分セクハラだろ!」
「あ、いや……そんなつもりで言ったわけじゃないんだよ!?」
「いいですよ、本当にそうなるかもしれませんし」
「そ、そうだよね! でも、ごめんねシェダルちゃん」
「いえいえ」
シェダルもなんでそれに乗るのか……乗らなきゃまずいのはそうだけれども。
「ところで昇! 今日は一緒に出掛けるぞ!」
「えぇ!?」
藪から棒に、シェダルはそう言った。
「おやぁ? デートかな?」
叔父さん的にはそう聞こえるだろうが、俺が思うに、きっとろくなことではない
「さぁ、そうと決まればさっさと食べよう!」
「お、おう……」
「こらこら、2人とも! 早食いしちゃだめだよ!」
叔父さんの注意を聞かず、食べ進めた。