第三百五話 情けない、俺の悩み
「いやはや、大量だな!」
「あぁ」
回収を終え、俺たちは奥へ奥へと再び歩き始める。
一応あの馬鹿デカい相手と戦えるようにはなったけど……やっぱり俺一人じゃ無理だったな……
ほんと、自分が情けない、レベルがいくらあっても、俺はシェダルと腕輪が無ければただの無能な鍵使い……そうだ、あのヒース社長が言っていた捨て台詞と同じ……結局俺は……。
「なぁ、昇」
「な、何?」
シェダルは立ち止まって、声を掛けてくる。
「お前……長官に言われたことを気にしてるだろ?」
「……」
やはりシェダルには図星だったようだ。
まぁ……ここは正直に悩みを打ち明けよう。
「なぁ、シェダル、俺ってさ……やっぱり一人じゃ何もできないのかな?」
「どういう意味だ?」
シェダルは真剣な眼差しで俺を見つめる。
「いや、これはずっと思い詰めてることでさ……ヒース社長に言われて、改めてそう思ったんだけど……俺って、このまま、誰かに頼ったり、道具に頼ったりしながら生きていくのかな? それって……まるでそれに寄生しているみたいじゃん……そういう生き方って……なんとなくだけど、良くない気がするんだ」
俺は思っていたことを打ち明けた。
これもう何度も抱えている事だ、シェダルは気にするな、力を与えただけとは言っているけど、それって……かなりせこいと思うんだ。
シェダル……流石にこんなこと言ったら怒るかな?
「……昇」
「……うん」
シェダルは声からして怒っているのが分かった。
俺は殴られる覚悟を決め、目を閉じた。
頬に熱い感覚が……しなかった?
あれ?
「……シェダル?」
シェダルはいつもの抱き癖を発動させ、俺を覆いつくしていた。
シェダルの体温と鼓動が、体中に伝わる。
「……お前は本当に大馬鹿だ」
シェダルは耳元でそう囁いた。
「ちょ、ちょっとシェダル……」
俺の体がだんだんと熱くなっていくのが分かる。
や、やべぇ……心臓が……。
「いいか? お前はここから先、ずっと1人で生きていくつもりなのか?」
「そ、そりゃ……将来的にはそうなるだろ……」
社会人になったら必然的にそうなるに決まっている。
俺はそう考えた。
「……それがお前のムカつくところだ」
「……え?」
「あのな、生きていれば必ず誰かに頼らなきゃいけないんだ、わかるか? 出来る事なら自分1人で何とかしたい、そう思うのは当たり前だ、だがな、世の中1人で何とかできないことがほとんどなんだ」
「……」
俺はシェダルの説教を黙って聞いていた。




