第二百九十七話 行く前に、君に会いたい!
「いやぁ、美味かったな!」
「あぁ、店主さんも元気そうで良かった」
俺たちはたらふく平らげた後、店を後にした。
店主さん……なんか以前よりも元気そうだった。
話を聞くと、どうやらヒューモンスター化した人々の罪が軽くなり、そこまで重い罪にはならないと聞き、安心したようだった。
……あのゴブリンの人が予想よりもすぐに帰ってくるってことか、仕事の仲間が帰ってくるというのは、確かに嬉しい事だろう。
ということは、愁のお母さんもすぐに帰ってこられるのであろうか? 愁のお母さんの場合は他の人よりかは罪は軽いだろうし、尚の事早く帰ってこられるのかな。
「……そういえば、俺が暴走した時に倒したゴーレムのヒューモンスター……アレの変身者って、子どもだったんだよな? しかも女の子……」
「あぁ……あの子もどうなることやら……」
シェダルの推理だとヒース社長の身内らしいが……もし、罪を償って外に出たら、あの子はどうなってしまうのであろうか? 少し心配だ。
「どれ、ダンジョンに行く前に会いに行ってみるか?」
「……あぁ」
俺はあの子を……小中学校の時の俺と重ね合わせた。
もしかすると……自暴自棄になって、自殺するのかもしれない。
もしくは、身内の後を追うように、犯罪に走るかもしれない。
……そんな気がした。
「恐らく少年鑑別所にいるだろう、さ、行こうか」
「あぁ……ってちょっと待て、俺らってその子とそんなすんなりと面会できるのか?」
冷静に考えると、彼女と赤の他人も同然な俺らがそんな簡単に面会できるとは思えない。
「大丈夫だ、ちょっと待ってろ」
シェダルはそう言って携帯電話を取り出した。
徐に操作し、自身の耳へと近づける。
……誰に繋げる気だ?
「あ、もしもし剣さん。シェダルです」
……どうやら剣さんに掛けたらしい。
「……はい、実は事件の加害者の少女と面会したいのですが、そちらに話を通してもらえますか? ……はい……はい」
シェダルは相槌を打ちながら会話を続けている。
……でも冷静に考えたら、少年犯罪の被疑者って、成人の被疑者よりも面会しにくいイメージがある……ドラマとかでそういうシーンはあるけど、大抵の場合近親者とか、職場の同期とか……。
「……ありがとうございます。では」
……シェダルは携帯を操作し、電話を切った。
「……話を通したぞ」
「通れたの!?」
俺は思わず驚愕の表情を浮かべた。
「法律上は、近親者、その付添人、その他必要と認められる者。らしい」
「……それで?」
「私たちはその他必要と認められる者に該当する……ようにしてくれた」
「おいおい、それグレーゾーンなんじゃねぇか?」
普通それに該当するのってめちゃくちゃ限られてるだろ。
ましてや未成年者の場合、先生とか……その辺が該当するんじゃねぇか?
「大丈夫だ、一応私たちがあの事件を解決したようなもんだし」
「……まぁ、そうだけどさ」
「そうと決まったら行くぞ!」
「あ、あぁ……」
シェダルは転移スキルに変身し、俺たちは少年鑑別所へと転移した。