表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

375/408

第二百九十三話 無能な鍵使い、その為じゃない

「まだ……まだだ……」


 奴は床に落ちた携帯電話に手を伸ばしている。

 シェダルは俺の身体から離れ、咄嗟にそれを足で蹴り飛ばした。

 奴の携帯はもう届かない位置まで行っていた。


「もう……終わりだ、ゲームオーバーですよ、長官」

「く……クソ……」


 奴は気を失ったのか、まるで力が抜けたかのように崩れた。


「昇……」

「あぁ……」


 これでケリはついた。

 もう……思い残すことは……。


「ふふふふ……アハハハハ!!」


 突然、笑い声が響いた。

 ……その声の主は、倒れている元魔王だった。


「私を倒して満足しているのかァ……鍵スキルのクソども……」


 奴は体を震わせながら、立ち上がった。


「いいか……いくら貴様らが強かろうがなァ……所詮貴様らはクソの頂点に君臨する鍵スキルだァ……誰も貴様らになんか見向きもしない……分かるよな? お前らは……その兵器が無ければ、ただ鍵の解析しかできない無能な鍵使いだ! そんな奴らと私……どちらが敬われるか……答えは分かる筈だよなァ……?」


 奴はゆらゆらと揺れながらこちらに近づき、呪詛を唱えている。

 俺は……その言葉に腹が立ったのか、揺れている奴の服を掴んだ。


「この野郎……大勢の人を犠牲にした癖に、まだそんなことを言うのか!」

「アハハ……憎いかい? 憎いよな?」

「クソ……」


 俺は右手で拳を作り、奴の顔面目掛けてそれを思いっきり近づけた……。


「……昇!」


 突如、向こうに聞き覚えのある声が聞こえ、奴の至近距離で拳が止まった。

 声のした方向を見ると、4色の戦士が見えた。


「……皆」


 俺は、今まで込めていた力が一気に抜け、奴を離した。

 そして、拳に暖かい何かを感じる……ふと見ると、シェダルが俺の手に触れていた。


「昇、お前のその手は、こんな奴をぶん殴る為にあるんじゃない」

「……」


 俺はシェダルのその言葉を聞き……腕を降ろした。

 確かに……こんな奴を殴ったところでどうしようもない、もう……終わったんだ。


「同志! 無事か!?」


 翔琉たちの後ろから、剣さんたちが駆けつけてきた。

 皆……無事なようだ。


「よくやったな! 主犯格の常滑を止めるなんてすげぇぜ!」


 剣さんは俺の肩をがっちり掴み、そう言った。


「昇! シェダルちゃん! 本当に無事でよかった……」

「もう! ウチらも大変だったんだからね!」


 翔琉と悠里は、シェダルに近づいてそう言う。

 ……でも、たった4人であんなに大勢のモンスター達と戦って生き残るなんて……本当に凄いと思う。

 俺たちが成功を噛み締めている中、警察と自衛隊もここまでやってきた。


「常滑・ロウ・ヒース、モンスター化携帯所持、使用で午後7時20分、現行犯逮捕」


 警察は腕時計を見ながら、奴に手錠を掛けた。

 奴は下を向いたまま……連行された。


「……後は法に任せよう、昇。あんな騒動を起こしたんだ、極刑は免れないだろう」

「……あぁ」


 ……法が奴の処遇を決める、確かに、相応の罰は受けるだろう。

 俺はそう考えた。


「さ、君たちは事情聴取に、下のパトカーに乗って! ……怪我は無いかい?」

「はい、大丈夫です」

「じゃ、こっちへ」


 俺たちは警察の人に誘導され、下へ降り立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ