第二百九十二話 オールスキル! 解放してやる!
「食らえェ!」
「どわぁ!?」
奴は口から粘り気のある何かを吐き出した。
これは……デビルスパイダーの糸攻撃か!?
足が封じられ、身動きが取れなくなってしまった。
「アハハハハハ!! どうした? 動けないかァ? もう一つ食らえ!」
奴は俺たちを固めようとしているのか、口からアイスワイバーンのようなビームを放つ。
おいおい、脚が動けないんじゃ避けようが……
「いや、腕は動かせる!」
シェダルはそう言って、ダイヤルを回した。
『鎌スキル! カマしすぎ!』
両手に鎌が装備され、シェダルは颯爽と糸を切断し、その場から切り抜けた。
後ろを振り向くと、ビームが床に命中したのか、氷柱が立っていた。
「こいつはお礼だ! 受け取れ!」
シェダルは鎌をまるで自分の腕の一部のように動かし、奴に斬撃を繰り返す。
「痛い……痛い……」
奴は後方に倒れ、唸り声をあげている。
『昇! ダイヤルをぶん回すんだ!』
『え!?』
いきなり何!? どういう事!?
『言葉通りだ! やれ!』
『ぶん回すったって……』
さっきよりも多く回せってことか?
「痛い……私は支配者なのに……許さんぞ……許さんぞ!!」
奴は立ち上がりこちらに向かってくる!
あぁもう! やってやるか!
俺は言われた通り、ダイヤルをぶん回した。
『剣スキル! 鎚スキル! 弓スキル! 魔法スキル! 格闘スキル! 収納スキル! 鎌スキル! テイマースキル! 削岩スキル! 幻想スキル! 建設スキル! 写真スキル! 回復スキル! 転移スキル! スケートスキル! 鑑定スキル!』
様々なスキルの名前が鳴り響いた。
俺たちの周りに武器が沢山出現し、標的を奴に向けている。
これは一体……。
俺はそんな中でもダイヤルを回し続けた。
そして……。
『オールスキル!! 超々凄すぎ!!』
その音声を最後に、スキルの名称を読み上げる掛け声が鳴りやんだ。
俺たちの周りには色んな武器や防具が浮かんでいる。
「死ねェ!! 鍵スキルのクソども!!」
奴はこちらに向かってゴーレムの腕を振りかぶり、殴りかかろうとしている! これはまずいぞ!
「昇! 鍵を回せ!」
「あ、あぁ!」
『超々!! スキル必殺!!』
俺は鍵を回し、必殺技を展開させた。
『超々!! 鍵スキル!! フューチャリング! オールスキル!! 超々!! オール凄すぎフィニッシュ!! 超々! スゲーイ!!』
そんな音声の後に、出現させた武器の数々が社長目掛けて飛んでいく。
まるで武器の雨のようだった。
「あぁぁぁ……痛い……痛い! 何故だ……何故鍵スキルなんかに……この私が……」
足に力が漲り、俺たちは飛びあがった。
「いけえええええええええ!!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
両足を伸ばし、俺たちは奴目掛けて蹴りをお見舞いした。
「ぐわぁぁ……馬鹿な……鍵スキルごときにこの私がァ……私は……この世界を……」
「今……その醜い姿から解放してやる!」
「その意味不明な思想から解放してやるよ、社長さんよ!」
「アハハ……この私が……醜い……意味不明だと……違う……私こそが……神なんだァ……神の筈なんだァ……私を……見てくれ……お願いだ……お願いだァァァ!!」
両足キックが命中し、奴は咆哮を上げ……魔王の体が崩れた。
俺たちは奴が倒れたことを確認し、変身を解除した。