第三十四話 母は魔族、続きが気になる
「150? 今は身長の話じゃなくて……」
「違う! 身長はもっと高い! 先ほどの質問の答えがそれだ!」
「……は?」
こいつからかうのも大概に……
「私は150歳だ、まぁウトピアではまだまだ若い方かもな」
「はぁ? それ本気で言ってるのか?」
「本気だとも、私は父が人間で母が魔族なんだ、いわば『半魔』というやつだな、あ、この言葉は差別用語だから他の奴には言うなよ?」
「あ、あぁ……」
「なんだ? その様子だと魔族を知らないのか?」
「名前は知ってはいるけど……そもそもウトピアの人、そんなに日本に来ないしなぁ」
ウトピアには多種多様な種族がいるというのは、学校でも習った。
人間は勿論、エルフやマーメイドや竜人、そしてシェダルが言っている魔族。
ウトピアは経済的に発達しているし、そもそも出現して5年しかたっていないわけで、来る人は少ない。
……そういえばシェダルは叔父さんに「ウトピアからの留学生」という設定を使ったが、叔父さんはなんで違和感持たずに受け入れたんだ? ウトピアが何でもありだからかな? ダンジョンが存在する時点で、どこかで納得してしまうのかもしれない。
「父は偉大な人間でな、人間の街での政府の権力者で、領地を所有していた、その立場としては珍しく平民からも慕われていた、私が生まれるずっと前、ウトピアは人間と魔族の仲があまりよろしくなくてな、戦争が終結したばかりだったと聞いている」
シェダルは今までの陽気な話し方とは一転して、落ち着いた感じで話し始めた。
思わず俺は、その話を聞き入ってしまった。
「そんな時、怪我をした私の母親を見つけたらしい、母は当時人間嫌いで、父を拒絶したらしい」
「まぁ、戦争終わって、はい、仲直りと言われても、ほとんどの民衆は禍根が残るだろうね」
「うむ、だが父はそんな母をものともせず、自分の屋敷へ運んだらしい」
「男前だね」
「だろ?」
後ろ向きでも、シェダルが微笑んでいるのが分かった。
「母は、運んだのはただの善意ではなく、きっと後から報酬やらを要求されると思い込んだ、父の領地にいた大衆も、最初は母に対して冷たい目で見ていたらしい、だが父はそんな母を暖かく迎え入れ、なんと領民の一人として迎え入れたらしい」
「えぇ!? そんなことしたら大衆は反対するんじゃないか!?」
「もちろん、だが、父は『彼女は悪い人じゃない、目を見れば分かる』などと言って迎え入れた」
「感情論じゃないか……」
「母もきっとそう思っただろう」
「それで? どうなったの?」
「まぁまぁ、落ち着け」
ついつい続きが気になってしまい、感情的になってしまった。