第二百八十三話 フルスロットル、めっちゃ揺れる!
「……悠里さん! 行きますよ!」
「うん!」
悠里と薫は各々乗り物から下車し、携帯を外して、口元に近づけた。
「「スキル必殺!」」
『『声紋認証!』』
モンスターがこちらに向かって近づいてくる。
だが、奴らの行動は無駄だ。
悠里と薫は再び武器に携帯を嵌めた。
『グリーンアーチャー! サイクロンフィニッシュ!』
『ヴァイオレットマジシャン! エレメントフィニッシュ!』
悠里が緑の閃光の矢、薫が紫のビームを放ち、俺らが立っている位置からセントレアコーポレーションまでの一本道ができた。
「今のうちに行け! 2人とも!」
「わかった! 昇! フルスロットルで行くぞ!」
『おうよ!』
シェダルは俺をフルスロットルで加速させ、セントレアコーポレーションへと向かった。
『今言うのもなんだが、4人だけで本当に大丈夫か?』
「あいつらなら大丈夫だ、元々の能力も高い上に私の武器もある」
『まぁ、そうだけどさ……』
「お前はあいつらを信じてないのか?」
『そ、そうじゃねぇよ!』
ただちょっと……不安に思えた。
シェダルの言う通り、あいつらなら大丈夫だろう、俺は信じる。
……って、ちょっと待て! 話してて気づかなかったけど……。
『お前このまま突っ込む気かよ!?』
「それ以外何がある?」
『正気か!?』
「こうしたほうが手っ取り早い!」
『おいおいおいおい!』
シェダルは会社の玄関まで一直線に進んでいる。
このスキル最初に使った時もそうだが、なんで突っ込みたがるんだよ!
……それくらい丈夫なのはわかるけどよ。
『ちょ、ちょっと前! モンスター来てるぞ!』
「わかってるさ!」
しかもただのモンスターではない、最小サイズではあるがドラゴンだ。
最小サイズとは言っても2階建ての建物ぐらいの大きさはある。
『このまま轢く気か!? 相手は仮にもドラゴンで、こっちはバイクだぞ!? 轢けるわけないだろ!』
「違う! こうするんだ!」
『うおおおおおお!?』
シェダルはそのまま俺をウィリーさせ、向かってくるドラゴンの首に乗り、そのまま背中の上へと到達する。
「うお!? でこぼこするな、この道」
『呑気なこと言うな! おええええ……酔い止め薬切れたかも……』
めちゃくちゃ揺れる……気分が悪い……。
「よし! もういっちょ!」
『え? おいおいおい……』
シェダルは再び俺をウィリーさせる。
「いけえええええ!!」
『うおおおおおお!?』
シェダルはそのまま飛び上がり、ビルの3階の窓へと突っ込んだ。
ビルに突入し、タイヤが擦れる音が廊下にこだましている。
めっちゃくっちゃ目線が揺れた……。