第二百七十二話 強い必殺、一度戻る
「今だ昇! 鍵を回せ!」
「お、おう!」
俺はシェダルの指示通り、鍵を回した。
『超々! スキル必殺!』
ノリノリの待機音が鳴り響き、両足に力が漲る。
奴は未だ怯んでいる、これはチャンスだ!
「行くぜ!」
「どーんと行け!」
俺は鍵を再び回した。
『超々!! 鍵スキル!! 超々!! 凄すぎフィニッシュ!!』
俺は両足を踏ん張り、飛び上がる。
そして奴目掛けて両足キックを放った。
「おりゃああああああああああ!!」
「いけええええええええええ!!」
俺たちは気合を入れ、奴の胸部にキックをお見舞いした。
シェダルがパワーを調整したからか、若干力が抑えられた……ように思えた。
後ろを振り返ると、既に武装が解除され、市民は気絶をしていた。
「昇」
「あぁ、この辺の市民は抑えられたようだ」
俺はダイヤルキーを外し、変身を解除した。
……が。
「うおぉ!?」
「そこまでビビることは無いだろう」
シェダルが俺の体を抱きしめていた。
いや、いつもの事ではあるけどさ……。
「そこの者! 大丈夫か!?」
遠くから俺たちを呼ぶ声が聞こえる。
ふとそちらを見てみると……。
「剣さん!」
「おぉ! 昇にシェダル!」
剣さんと八尾さんだった。
「お二人とも無事で良かったです……」
「それはこっちの台詞だ! それで? 企業への潜入はどうなったんだ?」
「「……」」
俺たちは一部始終を話した。
まず潜入した企業がセントレアコーポレーションであると言う事、これまでのヒューモンスター事件……果てはウトピア出現やダンジョン出現の主犯格は、社長である常滑・ロウ・ヒースであるという事、俺がそいつに嵌められて暴走してしまった事、暴れていたヒューモンスターは既に俺たちが倒した事、今現在起きている武装アプリによる暴走事件の主犯格もヒース社長である事を話した。
「なるほどな……」
「そんな! 信じられません! 本当なんですかそれは!?」
「芽衣! こいつらは嘘はつかねぇ、本当だ、そう言い切れる」
「そんな……」
2人は驚愕していた。
まぁ無理もない、俺が2人の立場だったら絶対信用しない。
「それより昇! 暴走したって……体は大丈夫なのか!?」
「あ、あぁ……俺は大丈夫です……それより! 他の暴れている市民は!?」
「あぁ、今春香やノーマンが前線に立って抑えているところだが……そうだ! 俺たち、今からそこに向かわなければいけないんだ! ……主犯格は、本当に社長である常滑で間違いないんだな?」
「……はい」
「なら……そいつをぶっ飛ばしてこい! 俺はとりあえず、市民の安全が完全に保証されたらセントレアコーポレーションに向かう……」
「わかりました」
「私たちは、一度避難所へ行って、仲間と合流します」
「おう! その方が確実かもな! 避難の為の冒険者や自衛隊ももうじきそっちに来るはずだ! それじゃあな! 気を付けろよ!」
剣さんはそう言って、八尾さんと共に向こうへと行った。
そして2人は車に乗り……どこかへと去っていった。
「さ、鍵屋に戻って卓郎さんと合流するぞ、昇」
「あぁ」
俺たちはひとまず、鍵屋へ戻ることにした。