第二百六十三話 忌まわしい鍵、一体何?
「なぁ昇」
「な、なに?」
移動しながらシェダルは俺に声を掛けた。
「その……本当にすまない、頑張らなくていいなんて言ってしまって……」
「だからもういいって……しつこいぞ」
「いや、お前……出会った時からずーっと、自分に自信が無いような発言を繰り返していただろ?」
「……」
個人的にそんな気はしないが……そうか?
『全く……まぁ俺も馬鹿だよな、腕輪を受け取った時は『これで馬鹿にした奴らを見返す』だとかなんとか言ってたのに、いざ見返そうと行動を起こして褒められるとこれだ、全くめんどくさい奴だよな、俺って』
『……俺また自信失くしちゃったみたいだ、やっぱりすげぇよシェダルは』
……うん、結構言ってたし、思ってたりもしたわ。
「お前は十分成長しているし、着実に私好みの男の中の男になっているぞ! 自信を持て!」
「な、なんだよ……恥ずかしいから言うなよ……」
「別に躊躇するな! あの鍵を使ってこうして無事な時点でお前は凄い!」
「……あの鍵?」
「あっ……すまん、忘れろ」
「……」
なんだよさっきから……。
あの鍵って……。
『これはだな……そのケースの入っていた忌まわしい鍵を制御するための物だ』
シェダルが行っていた事……俺はあの鍵で、何かやってしまったのだろうか?
なんか……怖いな。
「なぁ、話してくれよ、俺……セントレアコーポレーションで社長と会った後……何があったんだ?」
「……」
「なぁ……シェダル! 話してくれよ! ……仲間だろ?」
「……わかった」
シェダルは、俺の身に何があったのかを話した。
俺があの女の子から受け取った鍵を使って変身したこと、社長が俺を煽って怒りの感情を高ぶらせたこと、俺がヒューモンスターを倒して、中から女の子が出てきたことを話した。
そして、昨日の夜に社長が宣伝していた武装アプリによって、一部市民が暴徒化したこと、それによって冒険者と自衛隊が出動していること、市民に避難指示が出ていることも話した。
「そんなことがあったのか……」
「あぁ……だから私たちも、一旦そこに向かおう」
「あぁ……」
なるほど……。
社長の元へ今一度向かいたい気持ちもあるが……今は体勢を立て直すためにも、避難場所へ向かおう。
……と、ちょっと待て。
「その女の子って、どういう子なの?」
「……ウトピアの少女だ……」
「ウトピアの少女……」
まさか……。
「俺があの鍵を受け取ったのも……外国人の女の子だった……見た目は、ちょっとウトピアの人みたいだったかも」
「……それは本当か!?」
「あ、あぁ……」
ウトピアの人は、あまりいない……。
見た目や顔つき、シェダルに似ている部分も結構あったため、あの女の子はウトピアの人であると俺は推測している。