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第三十一話 アレが嫌い、ヘルプミー!

「おい! 昇! 助けてくれ!」

「なんだ!?」


 ドアが思いっきり開き、またしても……


「お前だから服!」


 素っ裸のシェダルが飛び出してきた。


「そんなことより! 早く助けてくれ!」

「な、なんだよ!」


 シェダルの顔はかなり真っ青で、俺の肩をしきりに振る


「忌まわしい……気持ち悪い……」

「はぁ?」

「とにかくアレを何とかしろ!」

「な、なに言ってんだ!?」


 シェダルはどうも混乱しているらしい。

そんな様子を見せられると、こちらも意味が分からなくなってくる。


「いいから来い!」

「うわぁ!?」


今日何回目かは分からないが、またしても連行された。



風呂場の前に着く、何回転びそうになったことか。


「奴は中にいる……早く何とかしてくれ!」

「なぁ、いい加減何があったのか……」

「早くしろ!」

「わ、わかったよ!」


 俺は慎重に風呂のドアを開けた。

何はともあれ、女のピンチを救えなきゃ男が廃る。

 ……ましてや、裸であることになんも恥じらいが無いとはいえ、その状態で俺に駆け寄るとは相当のピンチだ。

 一体どんなのがいるんだ? 開けた先にいたのは……


「……なんもいないじゃねぇか」


 見たところ、何もいない。


「よく見ろ! そこにいるだろ!」

「あぁー……」


シェダルが指をさした先には、確かに俺も若干苦手な「奴」がいた。

アレの正体というのは……


「『ナメクジ』か」

「そうだ! 私はアレが大大大嫌いなんだ!」

「なんで?」


 俺も好きか嫌いかと言われれば嫌いだが、ここまでの拒否反応は起こさない。


「理由はどうでもいいから早くしろ! 死ぬ!」

「ナメクジごときで死ぬかよ……」

「なんだと!?」


 シェダルは俺の服を掴んで、威圧的な表情を見せた。

ちょ……胸が……

 やばいやばい……欲情するな、今は件の奴を何とかしよう。


「わかった! わかったよ!」


 腕をまくり、盥とシャワーで応戦し、『アレ』を中に収め、玄関まで行って逃がしてきた。


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