第三十一話 アレが嫌い、ヘルプミー!
「おい! 昇! 助けてくれ!」
「なんだ!?」
ドアが思いっきり開き、またしても……
「お前だから服!」
素っ裸のシェダルが飛び出してきた。
「そんなことより! 早く助けてくれ!」
「な、なんだよ!」
シェダルの顔はかなり真っ青で、俺の肩をしきりに振る
「忌まわしい……気持ち悪い……」
「はぁ?」
「とにかくアレを何とかしろ!」
「な、なに言ってんだ!?」
シェダルはどうも混乱しているらしい。
そんな様子を見せられると、こちらも意味が分からなくなってくる。
「いいから来い!」
「うわぁ!?」
今日何回目かは分からないが、またしても連行された。
◇
風呂場の前に着く、何回転びそうになったことか。
「奴は中にいる……早く何とかしてくれ!」
「なぁ、いい加減何があったのか……」
「早くしろ!」
「わ、わかったよ!」
俺は慎重に風呂のドアを開けた。
何はともあれ、女のピンチを救えなきゃ男が廃る。
……ましてや、裸であることになんも恥じらいが無いとはいえ、その状態で俺に駆け寄るとは相当のピンチだ。
一体どんなのがいるんだ? 開けた先にいたのは……
「……なんもいないじゃねぇか」
見たところ、何もいない。
「よく見ろ! そこにいるだろ!」
「あぁー……」
シェダルが指をさした先には、確かに俺も若干苦手な「奴」がいた。
アレの正体というのは……
「『ナメクジ』か」
「そうだ! 私はアレが大大大嫌いなんだ!」
「なんで?」
俺も好きか嫌いかと言われれば嫌いだが、ここまでの拒否反応は起こさない。
「理由はどうでもいいから早くしろ! 死ぬ!」
「ナメクジごときで死ぬかよ……」
「なんだと!?」
シェダルは俺の服を掴んで、威圧的な表情を見せた。
ちょ……胸が……
やばいやばい……欲情するな、今は件の奴を何とかしよう。
「わかった! わかったよ!」
腕をまくり、盥とシャワーで応戦し、『アレ』を中に収め、玄関まで行って逃がしてきた。