第二百五十八話 起きたら行く、預からせてもらう
「昇!」
「っ!?」
……シェダルが怒鳴り声をあげ、俺は押し黙ってしまった。
「これ以上は……何もしなくていい」
「そんな……俺が頼りないのか!? 確かにシェダルと比べたら弱いけど……なら! ついてこれるように頑張るから……」
「もう……頑張るな」
「……え?」
俺はシェダルの言った言葉に、困惑してしまった……。
もう……頑張るなって……どういうことだ?
「しばらくは……頑張らなくていい……」
「……」
「……起きたら行くぞ、避難場所に」
「……避難場所? ヒューモンスターは何とかなったんだろ? なら……」
「だから……今は何も考えなくていい……休んでいろ」
「……」
シェダルの言っていることにしばし困惑していると……シェダルは横になっている俺の腰から無理矢理ケースを奪った。
「お前の鍵は預からせてもらう」
「お、おい!」
そしてシェダルは俺を突き放すように……寝室へと出て行った。
「待てよ! シェダル!」
俺は扉に向かって、静止の声を放ったが……既に足音は遠のいていった。
どういう事だよ……今は頑張らなくていいって……意味わかんねぇよ!
俺だって……俺だって……。
「クソ!!」
◇
「……シェダルちゃん、昇くんは?」
「……今、寝室で寝かせました」
「……そう」
私は昇を寝かせ、卓郎さんが待機している聖堂へと入る。
昇を寝室に置いて行ったが……暴走した昇を思い出し、思わず冷たい事を言ってしまった上に、ケースを奪ってしまった。
私としたことが……不甲斐ない。
こういう時こそ、寄り添うべきではないのか!? 私は何をやっているんだ!
「すみません、卓郎さん……私は昇に何も……」
私は思わず、卓郎さんに頭を下げた。
今の私には、これぐらいの事しかできない。
全く……150年の中で何を学んできたのだ私は……。
碌に寄り添うこともできていないじゃないか! これじゃあ卓郎さんも……。
「シェダルちゃん! そんなことないよ!」
「……卓郎さん?」
卓郎さんは私の言った事にに対して大声で反対した。
「シェダルちゃんが声を掛けたんだから、昇くんが戻ったんでしょ!? それに、叔父さん一人じゃ、ここにも来れなかったし……」
「いや、卓郎さんがいなければ昇は……」
「ここまでの叔父さんの活躍はほんの一握りだよ! 叔父さん、シェダルちゃんがいなかったら……昇くんを救う事なんてできなかったんだよ!」
「……」
……卓郎さんは、私をべた褒めしているが……そこまでの事をやったのだろうか?