第二百五十六話 俺の近く、皆がいる
潰したい……消したい! 殺したい……消し去りたい!
『お前は将来的に私の後を追うのだ! 何でも余裕にこなせるようになれ!』
『あんな子と遊ぶんじゃありません! あの子は我々とは違う階層の子、あの子と遊んでいると、貴方までそうなってしまいます!』
『お前鍵スキルなんだって?』
『いずれは父さんの後を継ぐんじゃなかったか? ははは!』
『その父さんもいなくなって、可哀そうな奴だなぁ』
『あなた……いつも調子に乗っているからそうなるんでしょ!』
『おいお前! お前なんか不正したろ!』
『有り得るな! なんせ鍵スキルだもんな!』
『ははは! 所詮貴様らは、私の前では無力なのさ! 無能な鍵スキルではな! お前の仲間も……いずれ死ぬ』
消えろ! 消えてなくなれ!!
憎い! 憎いぞ!
『おい! 金剛は不正なんかしてないし細工もしてない! スキルで人を決めつけるんじゃねぇよ!』
……誰だ?
『そういうギスギスしたのは無しにしようぜ! 一緒の戦うわけだし! な? 昇!』
この声は……翔琉?
『この間のお前、凄かったぜ! 俺たちもしかしたら、ダンジョン探索の授業の成績が学年トップかもしれないぜ!』
『ウチは昇くんが昇くんらしくしていればいいと思うよ! そのうちそういうのは分かるって!』
『……私に魔法教えて
この声は……愁? 悠里? 薫?
皆……何故ここに?
「……昇くん」
……誰だ?
「……昇くん」
……今度は誰だ!?
「……昇くん!」
……この声は。
『叔父さん……心配になったんだよ! 本当に大丈夫なのかい!?』
……叔父さん?
なんで皆……ここに?
あれ……? ここって……どこだっけ?
『昇くん……不満とか、不安とか……色々なものが積み重なってそういうことをやっちゃんたんだよね……これも叔父さんが不甲斐ないせいだよね……』
……叔父さんが言う。
そんな……そんなこと……。
『ごめんね、昇くん……叔父さんがもっとちゃんとしていれば、あんなことは起こさなかったよね……本当にごめんね……』
そんなこと……ない。
俺は……叔父さんのおかげで……ここまで来たんだ。
叔父さんのおかげで、生きる希望ができた。
叔父さんのおかげで、ここまで生きてこれた。
叔父さんのおかげで、鍵スキルでも頑張ろうってなった。
……鍵スキル?
『……昇!』
この声は……シェダル?
『母は鍵スキルに認定された私に言ったんだ、「どんなスキルだろうが、体を張って打開策を見つければ、きっと世間は認めてくれる」とな!』
『鍵スキルは善行を積むのが難しいし……モンスターを倒すのも一苦労だ……腕輪を持つ前の私もそうだった……すまんな……』
『よく頑張ったな』
『いつまでもそんな風にするんじゃない!』
……シェダルが言った言葉が、頭の中で再生した。
『いいか! 憎いのは分かる! 潰したいのも分かる! 私だって、そう思ったことが何度もある! だが、お前には……私たちがいる! だから……もうやめてくれ!』
……シェダル。
そうだ、いつも俺の近くには、シェダルに叔父さん、翔琉や愁に悠里や薫……。
皆がいた、俺がどうしようもなくても、離れなかった。
『お前は将来的に私の後を追うのだ! 何でも余裕にこなせるようになれ!』
『あんな子と遊ぶんじゃありません! あの子は我々とは違う階層の子、あの子と遊んでいると、貴方までそうなってしまいます!』
『お前鍵スキルなんだって?』
『いずれは父さんの後を継ぐんじゃなかったか? ははは!』
『その父さんもいなくなって、可哀そうな奴だなぁ』
『あなた……いつも調子に乗っているからそうなるんでしょ!』
『おいお前! お前なんか不正したろ!』
『有り得るな! なんせ鍵スキルだもんな!』
『ははは! 所詮貴様らは、私の前では無力なのさ! 無能な鍵スキルではな! お前の仲間も……いずれ死ぬ』
……あんな奴らなんてどうだっていい。
俺には……皆がいる!
『昇! 正気を取り戻せ!』
シェダルがこちらに向かって手を差し伸べる。
……行かなくちゃ、皆の元へ。