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第二百五十四話 叔父さん説得、シェダルも加わる

「ぐわああああああああ!! ぐわあああああああああ!! 消えろ! 消えろ! 消えろおおおおおおおおおおおおおお!!」


 昇は変わらず、花に向かって八つ当たりをしていた。

 私たちは、徐々に距離を縮めながら、昇の近づいていった。


「……昇くん」

「はぁ……はぁ……」


 昇は卓郎さんの声に反応したのか、再び静止をし、こちらを見つめる


「昇くん……」

「……」

「昇くんは……叔父さんと一緒に住んでて……楽しいかい?」

「……」


 卓郎さんは、話題を変え、昇が現状に満足しているかどうかを話し始めた。

 現状、家に帰ろうとは言っても、今の昇は耳を傾けない。

 ならば、世間話や、当たり障りのない会話をしたほうが良い……。

 卓郎さんは、恐らくそう考えたのだろう……憶測でしかないが。


「叔父さん、ずっと不安だったんだ、昇くん、今のままで幸せなのかなって……」

「……」

「ほら、昇くん、中学生の時……ちょうど引き取ってから1か月経ってない時だったよね、その時……自殺しようとしてた時あったでしょ?」


 え……?

 昇が……自殺?


「そんなことがあったんですか?」

「あぁ……忘れもしないよ、風呂場で昇くんが顔を湯船に突っ込んでいてね……昇くんは『風呂掃除しようとして転んだ』とか言ってたけど……シェダルちゃんは知ってたっけ? 昇くん、お父さんがスキル社会になってから自殺をして、お母さん……僕の姉さんは、病気で後を追うように亡くなって……」

「……」


 なんと……そんな事があったのか……。

 確かに、そんな状況では、精神がおかしくなるのも致し方がない……。


「叔父さん……昇くんの事ずっと見守ってて……様子がおかしいなとは思っていたんだけど……あの時は本当にびっくりしたよ……」

「……」

「昇くん……不満とか、不安とか……色々なものが積み重なってそういうことをやっちゃんたんだよね……これも叔父さんが不甲斐ないせいだよね……」

「……」

「ごめんね、昇くん……叔父さんがもっとちゃんとしていれば、あんなことは起こさなかったよね……本当にごめんね……」

「……」


 卓郎さんは……涙ながら、昇に謝罪した。

 昇は……黙ってそれを聞いている。


「ごめんね……ごめんね……」


 卓郎さんは、昇に謝罪の言葉を唱え続けている。

 それを聞いた昇は……。


「叔父……さん……」


 ……こんなことを小さく言った……これは。


「……昇くん?」

「叔父……さん……」


 昇は卓郎さんを呼び続けている。

 ……卓郎さんの声が、昇に届いたのか……?


「叔父……さん」

「昇くん! 叔父さんだよ!」

「叔父さん……叔父さん……」


 昇は……突然頭を抱えた。


「昇くん?」

「……昇?」

 

 私たちは……困惑してしまった。


「叔父さん……叔父さん……叔父さん……」

「……大丈夫かい!? 昇くん!」

「叔父さん……叔父さん……」

「叔父さんだよ! 昇くん!」


 卓郎さんは昇に近づこうと、私の制止を振り切った。


「卓郎さん!」


 卓郎さんは私の制止の声も聞かず、昇に近づく。


「はぁ……はぁ……」

「昇くん! 家に帰ろう? 避難指示が出たんだ……一緒に行こう?」

「はぁ……はぁ……」


 ……まずい!

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