第二百五十一話 転移ホール、迎えに行く!
……翌日。
避難当日だ。
私はテレビを観ていた。
『泥棒チェンジ!』
映像の中の、赤いマントが特徴の男が、そう掛け声を上げた。
『レッド!』
私はポリコソの続きを観ていた。
……避難前のリラックスの為に。
コソドレンジャーのレッドが変身アイテムである赤い航空機を銃に嵌めていた。
『1! 0! 1! コンプリート! 泥棒チェンジ!』
航空機についている、ダイヤルのような物を回し、コソドレンジャーのレッドは、銃のトリガーを弾き、変身する。
銃から変身音声が流れる……いつ見ても、テンションが上がる。
……と、ここまでにするか。
昼頃に、各々の家の前まで冒険者と自衛隊が来て、避難場所へと誘導するらしい。
その前までに、「私たち」は昇を何とかしなければならない。
そう、私だけではない。
「卓郎さん、準備は良いですか?」
「あ、うん! ちょっと怖いけど……昇くんの為なら、叔父さん、協力するよ!」
私が考えた作戦はこうだ。
卓郎さんと一緒に安息の地へ行き、昇と会う。
そして、卓郎さんが昇に声を掛け、正気に戻させる……。
はっきり言って、無謀な上にとても危険、尚且つ、正気に戻るかどうかは確証は無い。
だが、もはや時間は無い、上手くいくかは不明であるが……今ある手段を徹底的にやってしまおう!
「それでは、行きますよ!」
「う、うん!」
私はケースから鍵を取り出した。
『転移スキル!』
「スキルチェンジ!」
「す、スキルチェンジ!? なんだいそれ?」
あ、そういえば卓郎さんの前で腕輪を使うのは初めてだったな。
……いや、家族写真撮った時見せたよな? 忘れたのか? まぁいい。
「掛け声みたいなものです」
「か、掛け声!?」
「……やる気を出すために」
「そ、そうなのね……と、ところで、さっきから鳴っている音楽は何だい!?」
「あ、それは……」
……あぁ! いちいち説明しなきゃいけないのか!?
「……テンションを上げるためです」
「あ、そう……なんかパチンコみたいだね……あ、ごめん、早く行かないとね!」
……私は鍵を回した。
『スキル解放! 移りたすぎる! 転移スキル!』
「うわぁ!?」
私は紫のマントに身を包んだ。
卓郎さんは……驚愕の表情を浮かべていた。
「す、すごいねぇ! 叔父さん……びっくりしすぎて、言葉が出ないよ……というか、移りたすぎる……って、どういうこと?」
あ、これもか。
「……これもテンションを上げるためです」
「あ、そうなの……」
……自分で作っておいてなんだが、改めて説明すると恥ずかしいな。
昇の時は、初めて発表会以外……即ち個人に説明したこともあって、新鮮味があったのだが……さすがに二回目は……うん、もはや何も言うまい。
「さ、行きましょう」
「あ、うん!」
私は杖で円を描き、転移ホールを出現させた。
行先は勿論……安息の地。
「うおぉ!? これが転移ホール!? 叔父さん初めて見たよ!」
……卓郎さん、いちいち反応が良いな。
「それじゃ……行きましょう、昇を迎えに」
「……うん!」
卓郎さんは私の肩を掴み、ホールへと入った。
昇……今迎えに行くぞ!
昨夜、寝落ちしてしまい、更新できませんでした。
更新をお待ちいただいている皆様、誠に申し訳ございませんでした。