第二百五十話 出来る事、確証は無いけど!
「……卓郎さん!」
「あぁ……シェダルちゃん」
居間に入ると、卓郎さんが料理をしていた。
香りで何となく察してはいたが……どうやらドンピシャらしい。
「いやぁ、起こしちゃった? ごめんね」
「あ、いえ……私……眠れなくて……」
「だよねぇ、ボーイフレンドが怪しい物使って暴走したとなっちゃ、心配でしょうがないよね」
「……」
……卓郎さんの言っていることは大方正しかった。
昇が心配で……寝ようにも眠れない。
「ところで……何故料理を?」
「あぁ、昇くん、帰ってきたらお腹空くんじゃないかなぁって、作り置きしとこうかなって思ったからさ」
……卓郎さんは昇が好きな料理、チンジャオロースを作っていた。
「叔父さんが今できる事と言えば、これぐらいしか思いつかなくってね」
「……」
卓郎さん……。
やはりこの2人は家族だな、固い絆で結ばれている。
切っても切れないだろうな……。
「よし、完成っと……シェダルちゃん、今お腹空いてる? 本当は良くないけど……夜食とかどう?」
「あ、じゃあ、いただきます」
「うん!」
……歩き回って腹が減ってしまったし、ここは気晴らしに何か食べて整理しよう。
卓郎さんは皿に2人分のチンジャオロースを乗せて、テーブルに置いた。
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
手を合わせ、私たちは夜食を食べ始めた。
……やはり、昇がいないと寂しい。
昇ならばきっと、嬉しそうな顔で食べているのだろう……私は料理を口に運びながらそう考えた。
……絆、か。
お母様は元気でいるだろうか? あの掃除スキルの女は……今何をやっているのだろうか。
ウトピアから事実上亡命した私にとって……家族と言えば、昇か卓郎さんぐらいしかいないだろう。
……まだ1か月ちょっと一緒なだけなのに、どうしてだろうか。
家族……。
『だから……これ以上はやめてくれよ! お袋!』
……私はふと、以前、学校を襲ったヒューモンスターの時の事を思い出した。
……そうだ! 長官が開発した物なら……もしかしたら……。
「ごちそうさまー……やっぱ昇くんがいないと寂しいねぇ」
……卓郎さんなら、昇を正気に戻らせることができるかもしれん!
都合がいいことに、卓郎さんは鍵スキルだ! 安息の地に入ることができる。
そして、これについて確証は無いが……以前学校を襲ったヒューモンスター……愁の母親も、愁の言葉で正気に戻ったんだ
「卓郎さん!」
「は、はい!? な、なんだい!?」
「卓郎さんに……お願いがあります!」
「あ……うん! 叔父さんに出来る事なら!」




