閑話 武装 後編
『武装』
市民の携帯電話からそんな音声が流れる
「う、ぐ……ぐわあああああああああ!?」
市民の体に光が溜まり……白いカブトムシのような姿になる。
それは、昨夜、とある人物が発表した代物……。
「あれは武装アプリか!?」
「なにも操作せずに……?」
剣と芽衣は、市民が突然変身したその姿に、驚きを隠せなかった。
やがて、市民は、鍵屋に向かって走り出す。
「やべぇ!?」
剣は咄嗟にギアを戻し、車から降りた。
「やめろ!」
剣は持っていた武器で市民を抑えつけた。
「ああああああ!! ぐわああああああ!?」
武装した市民は暴れ始め、抵抗をする。
「クソ……なんて力だ……」
冒険者幹部である剣ですら、抑えつけるのがやっとなほど、その力は強かった。
「ここは私に!」
芽衣は市民に近寄り、自身の掌を武装した市民の目に近づけた。
すると……。
「ああああああ……あぁ……」
市民は眠りについたのか、力を失い、寝息を立て始めた。
「使えないと思っていた回復スキルの催眠能力……こんな所で使えるとは思っても見ませんでしたね……」
「ま、これでなんとかなったな……ありがとうな、芽衣」
「えぇ……」
2人は状況が呑み込めないでいた。
桐生地区に現れたヒューモンスターに、突如武装を始めた市民。
これは一体どういうことなのか……。
2人はそう考えた。
「……とにかく、気を取り直して桐生地区に……」
剣が再び車に乗り込み、桐生地区へ急行しようとした……その時。
「剣さん……あれ……」
芽衣は道路の向こう側を指差した。
そこには……。
「あ、あれは……」
……先ほど眠らせた人のような……武装した市民たちがいた。
◇
『速報です! 日本全国の街中で、一般市民が、セントレアコーポレーションが昨夜配布を始めた、所謂武装アプリを使用し、暴れているとの通報が相次いで出ています、付近の住民の皆さまは命を守る行動を……きゃあああああああ!!』
速報を伝えるキャスターに向かって、白い装甲を身に纏った自分物が襲い掛かる。
その光景を嬉しそうに観る影がいた。
「ふふふ……アハハハハハハ!!」
魔王となったヒースは、混乱に見舞われている光景に一喜一憂していた。
片手には携帯電話を持っていた。
「国民の一部が武装を始め、無差別に襲う……まさに混乱! 素晴らしい!」
ヒースは携帯電話を掲げながら、そう呟いた。
「下準備はこれで終わった……後は……」
ヒースは次の段階へと進もうとしていた。