第二百四十三話 暴れる昇、何とかする!
私は走り続けた。
早くしないと……まずい!
このままでは、昇は取り返しのつかないことになるかもしれない……それだけは何としてでも避けたい!
私は走りながらそんな事を考えていた。
しばらく走っていると……金の影が岩石の怪物を殴っている光景が遠目から見えた。
その目の前には……戦士に変身した翔琉に愁、悠里がいた……が、戦闘には参加していない。
昇は……一方的にヒューモンスターに攻撃しているようだった。
『超! 鍵スキル! やばすぎ! 強すぎ! 超フィニッシュ!!』
私が皆の前に近づこうとしていたその時、そんな音声が流れ、昇の片腕が逃げようとするヒューモンスターに突き刺さり……昇はそのまま足でそれを引き剥がした。
やがて、ヒューモンスターの硬い岩肌が崩れ……中から少女が現れた。
アレがヒューモンスターの中身……まさかあんな少女が……
私が3人に声を掛けようとした……その時だった。
「潰す……潰す!」
昇は無抵抗の少女に攻撃を仕掛けようとしていた。
「やめろ! 昇!」
赤い装甲を身に纏った翔琉が、その攻撃を止めようとしていた。
「邪魔だ……邪魔だ!」
昇は翔琉に攻撃を仕掛けようとしている! いかん! このままでは……。
私は咄嗟に拳を握り締めた。
今昇を止める方法は……これしかない!
「昇! 歯を食いしばれ!」
私は昇の顔面目掛けて、その拳をぶつけた。
金の装甲を身に纏った昇は、私の攻撃によって地面に倒れた。
「……シェダルちゃん!」
「翔琉! 私が昇を何とかする! お前は愁と悠里とその少女を連れて逃げろ!」
「お、おう!」
翔琉は少女を抱え、他の2人と合流した。
「シェダルちゃん! 1人で大丈夫!?」
悠里が私に向かって叫んだ。
「安心しろ! ……昇は私が何とかする」
「……わかった! 気を付けてね!」
「さ、愁、悠里。行こう!」
一向は安全な場所へと逃げて行った。
とりあえず、これで桐生地区には私と昇しかいない……筈だ。
「う、うぐぅ……憎い……苦しい……」
昇は立ち上がり、そんなことを呟いた。
怒りの感情でここまで……早いところ何とかしなければ……。
だが……どうすればいい? ここで昇に攻撃をしたら、さらに刺激して大変な事になるかもしれない……。
だが、このままでいると、一般市民に危害が及ぶ……。
やはり攻撃するべきか? だが、それでは昇が死んでしまうかもしれない……。
『俺がもしも……どうにもならない状況になったら……その時は、お前が俺を止めろ。俺を殺してでも……』
……そんなことはできるわけがない。
私はあの時誓ったんだ。
『あぁ、お前がもしもどうにもならなくなったら私が止める。その代わり……死ぬな』
絶対に死なせたりはしない。
私はお前を救って見せる! 腕輪を与えたのだから!
……腕輪? そういえば……。
『ここは鍵スキルを持つ者だけが入ることができるんだ、それ以外の奴は入り口を見つける事すらできない』
……安息の地。
あそこなら私と昇しか入れない……筈だ!
そうと決まれば、鍵を変えよう!




