第二十九話 君は三振、ついご乱心
くだらねぇ……俺は呆れて盛られた大量のピーマンとタケノコの山を切り崩す作業に取り掛かろうとした、その時だった。
「ところでシェダルちゃん! ズバリ、昇くんのどこに惚れたの!?」
叔父さんはテレビのインタビュアーのような質問を繰り出した。
唐突な質問に、口に入れた山の一部を噴き出しそうになった。
おいおい……どう切り抜けるつもりだ?
「そうですね、ぶっちゃけ容姿も性格も私のストライクゾーンとはブレブレで、四球ってところでしょうか?」
「……」
おい! お前付き合ってる設定ならもっと褒めるなり……
「でも、昇ったら、何度も私にアタック仕掛けてきて……気が付いたら、もう、三振でしたね」
お前野球用語言いたいだけだろ! なんだよ「三振でしたね」って! 意味わかんねぇよ!
「流石昇くん! 男だね! 何度も振り向かせようと努力してたなんて、叔父さん感動しちゃうよ!」
叔父さんも叔父さんで、何でそれで納得するんだよ!
さっきの「若いんだから」発言といい、今展開された野球発言といい、叔父さんはスルースキルが高いのか、ただノリがいいのか。
「昇くん! シェダルちゃんを幸せにするんだよ!」
「いや、結婚するわけじゃないんだし、この先どうなるかなんて……」
「昇は私のことが嫌いなのか?」
「!?」
おい! そんな上目遣いで俺を見つめるな!
演技、これは演技だ。
付き合ってる設定に乗らない俺に対して「お前もちゃんとこの船に乗れ」と言いたいんだろう、顔にも書いてある、どう見ても書いてある! 間違いないんだ!
「こらこら昇くん! ダメじゃないか、ほら、謝って!」
「あ、ご、ごめん……」
「しょうがないな、許してやる!」
「……」
こいつ……妥協は許さないということなのであろうか? いやちょっと違うな。
「なんか昇くん、以前よりも明るくなったんじゃない?」
「え?」
「いや、なんとなくだよ、なんとなく」
「そ、そうかな? あはは……」
「そうそう! それだよ! 昇くん、いつも食事の時はムスっとしてたけど、今はそうやって笑顔を見せてるじゃない! きっとシェダルちゃんと付き合って、心が暖かくなったのかな? このこのぉ~」
「……」
シェダルのおかげ、か。
確かにこいつのおかげで、腕輪の力を手に入れたし、なかなか憎めない奴だとは思うけど……
「おやぁ? 顔が赤いよ? 昇くん!」
「ははは! 昇! お前可愛いところあるな!」
「う、うるせぇ!」
緊張をごまかすために、俺は大量のおかずを食べ進めた。