第二百四十一話 昇が暴走、どこかへ逃走
「潰す……潰す!」
昇は標的対象を見失ったのか、八つ当たりをするように、辺りの攻撃を仕掛ける。
周りが見えていないのか……でたらめだった。
私にも攻撃が当たりそうになったが、間一髪で避けた。
「はぁ……憎い……憎い!」
昇は……転移装置を攻撃し始めた!
いけない! そんな事をしたら……。
「やめろ! 昇!」
「うるさい……消えろ!」
私は制止しようと声を上げるも、昇は転移装置への攻撃を止めなかった。
やがて、転移装置から火花が散り……熱暴走を始めたのか、部屋の中の気温が上がっているように感じる。
「はぁ……はぁ……ぐわあああああああああああ!!」
「昇!」
「許さない……潰す! ぐわああああああああああ!!」
昇は咆哮を上げ……上へとジャンプし、天井を突き破った。
いけない……あのまま昇を町中へ解き放ったら、ヒューモンスター以上の被害が出るかもしれん!
早く止めなければ……。
だが、外に出るとしても、どこへ……。
って、今は考えている暇はない! 装置が炎上を始めた今、ここにいるのは危険だ! 早く脱出しなければ……私は急いでケースから転移スキルの鍵を取り出し、腕輪に挿しこんだ。
『転移スキル!』
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 移りたすぎる! 転移スキル!』
私は外をイメージし、転移ホールを作った。
咄嗟にその中へと入り、セントレアコーポレーションを脱出した。
◇
「スキル社会反対!」
「武装アプリの配信を止めろ!」
「セントレアコーポレーション打倒! 現政権打倒!」
「反対派は売国奴!」
「武装アプリは必要!」
「スキル社会万歳!」
外に出ると、相変わらずデモが続いていた。
良かった……無事に脱出できたようだ。
……だが、昇は一体どこへ行った?
長官も何とかしなくてはいけないが……。
しかしその前に桐生地区に行かなくては……あぁもう! 頭が爆発しそうだ!
……そういえば昇、天井を突き破る前。
『許さない……潰す! ぐわああああああああああ!!』
許さないなどと言っていたが……。
『お前の仲間も……いずれ死ぬ』
『……許せねぇ』
……まさか、昇は桐生地区に?
いかん! このままでは、昇は取り返しのつかないことをするかもしれん!
早く行かなくては!
私はそう考え、転移ホールを作成し、桐生地区へと急いだ。