閑話 桐生地区 3
「薫ちゃんに……手を出すな!」
薫は、愁をただ見つめていた。
「薫!」
「薫ちゃん!」
「翔琉さん……悠里さん……」
戦士に変身した翔琉と悠里が、薫に近づく。
薫はひとまず安心した。
「薫ちゃん! 傷だらけじゃない……」
「私は……大丈夫です」
薫は大丈夫だと言うが……第三者から見た薫は、明らかに戦えるような姿ではなかった。
悠里は傷だらけの薫を抱きしめ、怒りの感情を露にする。
「そんなわけないでしょ! 翔琉! 薫ちゃんを安全なところへ!」
「2人で大丈夫か!?」
「大丈夫!」
「よし……さ、薫」
薫は実装解除を唱え、翔琉に抱えられ、マシンラビットへと乗り込んだ。
一方愁は……。
「貴様……よくも……薫ちゃんを……絶対許さない!」
闘志を燃やしていた。
「愁! 一緒にやっつけるよ!」
「おうよ!」
薫からバトンタッチをして、悠里と愁が、ヒューモンスターと戦うことになった。
「三沢愁……羽田悠里……貴様らも殺す!」
「えぇ!? ウチら!? なんで!?」
「貴様ら……妨害する……許さない!」
「妨害する……?」
悠里は、ゴーレムヒューモンスターの言っていることの意味が分からなかった。
愁は、ヒューモンスターの言った事を推理した。
昨日襲われたのは翔琉の家と悠里の家。
過去のヒューモンスターは、議員や敵対勢力などの殺害を目的にしていた。
そして今回は、薫を襲い、そして自分たちも標的……。
「まさか……薫ちゃんを襲ったのは……」
愁は持っていた鎚を握りしめ、薫を襲った理由について、何かを察する。
薫を襲った理由……もしかしたら、一連の事件の黒幕が、ヒューモンスターを倒している自分たちを狙っているのではないかと。
そして、薫を殺害しようとした……。
「許せねぇ……絶対に許せねぇ!」
愁はゴーレムヒューモンスターに向かって鎚を振り下ろした……が、その攻撃は片手で防がれてしまう。
「クソ……」
このままではゴーレムヒューモンスターの反撃が飛んでくる……そう愁は考えたが、緑色の閃光がゴーレムヒューモンスターに命中し、難を逃れた。
「愁! 考えなしに突っ込まないの!」
「でも……薫ちゃんが……」
「それはウチだってそう思う! でも今は冷静になりなよ! 昇くんやシェダルちゃんもいないんだよ!?」
「……」
愁は悠里の言葉を聞いて我に返り、一度体勢を立て直すため、悠里の元へと近づいた。
「ごめん悠里、俺、冷静さを欠いてた」
「全く……惚れた女の子の為に奮闘するのは良いけど! 少し考えなよ」
「ほ、ほれ……」
愁は悠里の言葉に、顔が熱くなった。
装甲越しではあるが、顔が真っ赤になっていた。
「あ、いや、その……そういうわけじゃ……」
愁は弁明しようとするも、そんな余裕はないと言うように、ゴーレムヒューモンスターは攻撃態勢に入る。
「愁!」
「おう!」
2対1の戦闘が、桐生地区の住宅地で開かれようとしていた……。