閑話 桐生地区 2
「……やった?」
薫はヒューモンスターを撃退したと確信した……が。
「岩国薫! ……殺す!」
ヒューモンスターが爆風から飛び出し、薫の首根っこを抑えつけた。
「う……ぐ……」
薫は抑えつけられている腕を掴み、引きはがそうとするも、抑えつける力が強く、離れなかった。
「く……苦しい……」
「このまま……死ね!」
ゴーレムヒューモンスターは、持っていた棍棒を薫の顔面に目掛けて振った。
棍棒が薫の顔面に命中し……薫の顔を覆っていた鋼鉄の装甲の一部が割れてしまい、片方の目が露になってしまった。
「げほげほ……はぁ……はぁ……」
薫はそのまま地面に叩きつけられ、大きなダメージを受け、苦しみのあまり息切れするも、再びヴァイオレットステッキを掴み、戦闘態勢を整える。
鋼鉄の塊をイメージし、ゴーレムヒューモンスターに目掛けて打ち続ける。
しかし、その塊は、野球の如く棍棒で跳ね返されてしまう。
「同じ手は効かない……何か方法は……」
薫は肉眼で見るヒューモンスターに恐怖を覚え、後ずさりをする。
「皆……早く来て……」
ゴーレムヒューモンスターは、恐怖で震える薫目掛けて、再び攻撃を仕掛けようとした。
薫は死を覚悟し、目を閉じた。
転校続きでストレスがたまったこと、小学校の頃に同級生を傷つけてしまったこと、見知らぬ魔女に助けられたこと、その魔女に背中を押され魔法を学び始めたこと、高校の授業がきっかけで初めて友達ができたこと、戦士としての力を与えられ陰謀と戦う決意をしたこと、友達の中で気になる人ができたこと、その人に人生で初めてのプレゼントをあげたこと……。
そんな記憶が走馬灯のように蘇った。
(生まれ変わっても……友達沢山作りたいな……)
そんな事を思い、薫は攻撃を受け止める覚悟を決めた……。
……だが、受けると思われた攻撃の痛みは……感じなかった。
薫が恐る恐る目を開けると……青き戦士が攻撃を受け止めていた。
その青き戦士は、薫が思いを寄せている相手……愁だった。
「愁……さん?」
愁はゴーレムヒューモンスターを持っていたブルーハンマーで跳ね飛ばした。
ゴーレムヒューモンスターは地面に叩きつけられ、倒れた。
「薫ちゃんに……手を出すな!」
薫は、愁をただ見つめていた。