閑話 ヒューモンスター出現 3
『繰り返し、お伝えいたします! 現在、祇園市にモンスター人間出現との情報が入ってまいりました! 付近の皆さんは命を守る行動を優先してください!』
「ここって……桐生地区!? つーかこのホテルも確か……」
ホテルのロビー。
そこにあるテレビの速報を観て、悠里は驚愕していた。
悠里はいざという時に母親を守れるように、変身武器であるグリーンアローが入ったボストンバックを握りしめていた。
テレビの周りには、ホテルの客が集結し始め、従業員も何事かと思い、足を止めていた。
『お客様にお知らせいたします、現在、この付近にモンスター人間の情報が入ってまいりました、お客様の安全の為、5階、大宴会場までお集まりください、お客様の心情は存じておりますが、どうか冷静な行動にご協力お願いいたします』
ホテルにて、案内放送が流れる。
通常、このようなホテルの放送は、催し物の案内や観光案内、客の呼び出しが通常行われる。
だが、このように避難指示が出るのは、あっても地震や火事などの災害の時である。
客は放送を聞いて、ただ事ではないという自覚を持った。
(現場に行かなくちゃ……)
悠里はテレビから離れ、現場へ急行しようとした……。
が、腕に反作用の力が入り、止まってしまった。
悠里が後ろを振り向くと、自身の母親が、外に出ようとしていた自分を引き留めていたのだ。
「悠里! どこ行くの!」
「離してよママ! ウチ、行かなくちゃいけないとこがあんの!」
「こんな時にどこに行くっていうの! 部屋に戻りましょ!」
「嫌よ!」
ホテルの中で、親子の攻防戦が始まる。
通常であればその光景を客が見物するものだが、あいにく客たちは、避難のための移動に忙しく、それを見ている隙は無かった。
「ウチは……戦わなくちゃいけないの! 友達がピンチなの!」
「悠里! 友達なら自衛隊や警察に……」
「ウチが行かなくちゃダメなの!」
お互い一歩も譲らない。
何としてでも友人を援護したい悠里、娘を危険な場所へ行かせたくない母親。
その流れに終止符を打つように、1人の乱入者が割って入る。
「悠里!」
「愁!」
その乱入者は愁だった。
悠里は母親の腕を払い除け、愁に近づく。
「愁! 来てくれたの!?」
「あぁ! 俺の近所の人は全員自衛隊に誘導されて避難した! じきにここにも来る! それよりも、行こう! 薫がピンチだ!」
「うん!」
悠里は愁に連れられて、外に出ようとした。
「悠里!」
母親は、引き続き、自分の娘を危険な場所へ行かせまいと制止の声を上げる。
悠里はその声を聞き、後ろへ振り向いた。