第二十七話 同棲決定、嫌です転移
「ねぇ昇! 叔父様に頼みがあるんじゃなかった!?」
シェダルが大声でそう言った。
「た、頼み!?」
一体何なんだよそれ! 先に打ち合わせしろよ!
「なんだい昇くん、頼みって? 叔父さんに頼み事なんて珍しいね、いいよいいよ! 何でも言って!」
やばい……どう繋ぐ?
「実は私、ウトピアから遥々ここ、日本へ来たのですが、下宿先の手違いで追い出されてしまって……それを昇に相談したら『叔父さんなら何とかしてくれるかもしれない、あの人はとても優しくて、頼りになる素晴らしい人だから』と言うので……」
「の、昇くん! 叔父さんの事をそんな風に言ってくれるなんて……うれしくて涙が出そうだよ……」
ナ、ナイスアシスト? でいいのか?
「いいよ! シェダルちゃんだっけ? 叔父さんは卓郎! 金剛卓郎だ! この家は狭いし、いまいちパッとしない鍵屋だけど、部屋余ってるから、自由に使っていいよ!」
「まぁ嬉しい、ありがとうございます、卓郎さん!」
叔父さんの同意を得た……つーか叔父さんも器が大きすぎる。
普通なら「付き合って5日しか経ってないのに、一つ屋根の下とは何事ですか!」っていう場面だろここは。
「いやぁ今日はめでたいねぇ、そうだ! 今日は御馳走だ!昇くんの好きな料理作ってあげるよ!」
「あ、私も手伝います」
「いいよいいよ! それより荷物とかあるでしょ? 昇くん、シェダルちゃんの荷物運んであげて! あ! これって初の共同作業ってやつかな?」
「ちげぇよ!」
「ま、叔父さんは遠くから見守ってるから! さぁ夕飯の準備!」
「ちょっと叔父さん!」
「さぁ! 共同作業と行くぞ、昇! 安息の地から持って行くものが山ほどあるぞ!」
シェダルは転移スキルの鍵を出した……まさか。
「さ、行くぞ!」
「ちょっと待って! そのスキルはやめてくれ!」
「安息の地にはこいつが無いと行けないだろう! さぁ行くぞ!」
「勘弁して! そのスキル乗り物酔いと近くて、リバースしそうになるから!」
「我が儘言うな!」
シェダルは俺の腕を無理矢理引っ張り、入口へと「運んだ。」
「いやだあああああああああああ!!」
俺の叫びが、鍵屋の外へこだました。