第二百二十三話 同志の頼み、俺たちの段取り
「「この鍵屋を守っていただけないでしょうか?」」
俺たちは、冒険者4人に向かって頭を下げた。
流石に幹部メンバーである彼らにお願いするとなるとこのくらいしないとダメだ。
「ちょ、ちょっと2人とも……」
叔父さんは頭を上げろと言うように、俺たちの肩を叩いた。
……が、俺たちは頭を上げなかった、というか上げられない。
「……少し野暮なことを聞くが……その企業ってのは、どこだ?」
「それは……」
「……」
……言いづらい。
流石にあの大企業の事を口にしたら、剣さんの事なので「俺らも潜入しよう」とかいうかもしれない。
そうしたら、冒険者ギルドがセントレアコーポレーションに弓を引いたと言われて、迷惑を掛けるかもしれない。
俺たちは、その企業の名前を言えないでいた。
「……まぁいい、皆までは聞かない」
「……すみません」
「……そろそろお前ら、頭上げろ! 俺はそういうの……苦手なんだ」
……さすがにお願いする対象に頭を上げるように言われたので、俺たちはお言葉に甘えた。
……だがやはり、こんなことをプロの冒険者である彼らに任せていいのだろうか?
さすがに彼らにも任務があるし、こんな鍵屋を守る任務なんて……。
「……わかった! その任務、請け負うぜ!」
……え?
今……請け負うって言った?
「い、良いんですか?」
「おうよ! 同志の頼みだ! 請け負うに決まってるだろ!」
「剣さん……ありがとうございます!
俺は再び頭を下げた。
「だから頭上げろって!」
「あ、すみません……でも、本当に良いんですか?」
「おう! お前らには世話になってるからな! そろそろ恩返ししたいと思っていたんだ! 皆はどう思う?」
剣さんは自身のパーティメンバーに対して呼び掛けた。
「俺は賛成です!」
「私も……請け負います」
八尾さん、峰田さんも了承してくれた。
「お前は? 春香」
「うーん……請け負いたいけど、私たち全員がここを重点的に守ってたら、他の市民も平等に守らないといけない気がするけど……」
……確かに。
身内を守りたいのは他の市民も同じだ。
冒険者の幹部のパーティがこんな街の隅にある鍵屋を重点的に守るとなると、他の市民に示しがつかない……。
「……よし、じゃあ、俺と芽衣がここを守る! 春香とノーマンは、この街を巡回して、平等に守るってのはどうだ? パトロールしている冒険者は俺らだけじゃねぇ、春香とノーマンなら冒険者20人分の戦闘能力はある筈だ、それでどうだ?」
「冒険者20人は言い過ぎだと思うけど……まぁそうね、それなら私は良いかな」
「よっしゃ! 決まりだな!」
……どうやら段取りが決まったようだ。




