第二百九話 俺の家、穴だらけ
「な、なんだこりゃ……」
俺たちはシェダルの転移スキルで、翔琉の家へと急行した。
翔琉の家はかなりの豪邸で、周りの家も似たような物件ばかりだった。
だが、現在の翔琉の家の様子はといえば……。
「……穴だらけだな」
まるで砲弾の雨が打たれたかのように穴だらけだった。
警察は既に規制線を張っていて、野次馬もかなりいた。
「……」
翔琉は、穴だらけになっている自分の家を見て……絶句していた。
「一体何がどうなってるんだよ!!」
「し、信じられない……」
「……」
愁、悠里、薫も、家の惨状に動揺を隠せずにいた。
……かくいう俺も、あまりの惨状に言葉が出ない。
一体何の目的でこんなことを……。
「わ、若!」
突然、規制線の中から、スーツ姿の男性が駆け寄ってきた。
わ、若!? 極道映画とかでしか聞いたことないぞそんな言葉!?
って、そんな悠長なこと考えている場合じゃない、男性は手を振って、引き続きこちらへと走ってくる。
まさか……。
「……伊丹!」
我に返ったであろう翔琉が、その男性に駆け寄る。
なるほど、あの人が伊丹という人なのか。
見た感じ、彼に怪我は無いように見えた。
とりあえず俺はそのことに安心した。
「伊丹! 怪我は?」
「わ、私は大丈夫です、ですが……」
男性……伊丹さんは、息を切らしながら、状況を話した。
その内容に、俺たちはさらに驚愕した。
「しゃ、社長が……お怪我を……モンスター人間に抵抗して……私は……どうにも……」
伊丹さんは泣きそうな声でそう話した。
社長……そう、すなわち翔琉のお父さんが怪我を負ってしまったということだ。
……被害者が出てしまった、それも翔琉の身内……。
「そ、そんな……父さんが……」
翔琉は過呼吸になり、胸を抑えながら跪いた。
「か、翔琉!」
悠里がすかさず翔琉に近づき、宥めるように抱えた。
「翔琉!」
「翔琉さん……落ち着いて……」
愁、薫も翔琉に近づき、翔琉を宥めた。
「それで……襲った奴はどこに?」
シェダルはこの状況の中、冷静な口調で伊丹さんにそう聞いた。
この状況下でも冷静でいられるシェダルを見て、俺も自然とそのような状態になった。
「わ、私が社長に駆け寄った時には……既に……」
「……」
ヒューモンスターは何の目的でこの家を狙ったんだ?
翔琉の家を襲うメリットといえば、強盗とか、誘拐ぐらいしか理由はない気がする……。
俺がくだらない推理をしている中、見慣れた男性が現場から出てきた。
「同志!」
「……剣さん!」
捜査協力をしていたであろう剣さんが、こちらに駆け寄ってきた。




