閑話 魔法使いの過去 中編6
「私は先生にお礼がしたいと思って、お礼にプレゼントを渡そうと思ったんだ……でも」
「……でも?」
「先生は……突然来なくなった」
「……」
その先生……一体何があったんだろう?
私は女性の話にいつの間にか聞き入っていた。
「街の中を何度も探した、でも見つからなかった」
「……」
「泊まっていた宿屋も見つけたんだけど、宿屋の主人が『突然消えた』とか何とか言ってて……」
結局、振出しに戻った、ということなのか。
なんというか、やるせないだろうな……。
「……そして探し始めて数日後、貴方も知っている事件が起こった……言わなくても分かるよね?」
「……ウトピア出現……ですか?」
「そうだね、私たちの場合は『地球融合』とか何とか言ったりするんだけど、それで、私はふと思ったんだ」
「何を……ですか?」
「先生が消えたのと、ウトピアと地球が融合したのって……何か関係があるんじゃないかって」
なるほど、でもそれって……
「……こじつけでは?」
「言えてるかも、でも、なんとなくそんな感じがしたんだ」
なんとなく……か。
「……その先生と会ったら……何がしたいですか?」
「そうだねぇ……まずは私の魔法の腕を見てもらいたいかな、そして沢山お礼を言いたい、そして……」
「……そして?」
「……渡しそびれたプレゼントを……改めて渡したいな」
女性はそう言って、ポケットから小さなケースを出してきた。
それは……。
「……指輪?」
「うん、先生に私の感謝の気持ちを……この指輪に込めて渡したくてね」
「……」
私の中で、指輪を渡すというのは、そういう関係の話だと思うのだが……。
……まぁ、女性の顔を見るに、そういう気持ちはないだろう、多分。
「……ま、貴方の言う通り、先生が地球のどこかにいるってこじつけかもね、私ったら、ただ旅をしたい理由に先生を利用しているだけかもね」
「あ……そんなこと……」
「いいよいいよ、気を遣わなくてさ、それより、貴方は魔法スキルなんでしょ?」
「……はい」
話題がスキルに戻った。
まぁ、このまま変な方向に話が進んだらまずいか……。
「せっかく魔法スキルになったんだし……魔法、極めて見ない?」
「……興味無いです」
「そんな! 魔法ってすごく面白いんだよ!」
「……そうなんですか?」
「うん! 人生の半分は損してると思う! 貴方は私たち魔族と違って命は限られてるんだから! 楽しまなくっちゃ!」
「……」
……楽しむ、考えたことなかったな。
魔法……か、私も極めたら、この女性のように、容易に扱えるようになるのだろうか?
少し……興味が湧いてきたかも。
……というか。
「あの……そういえば……なんで……ずっと……入り口の前に?」
「いやいや、君が心配だったからに決まってるじゃない! 仮にも助けた相手だし、後々後遺症とか出たら……」
「心配……しすぎじゃ……ないですか?」
「そうかなぁ?」
……私が心配でここに?
かなりの心配性だな、この人。
そんな事を考えていると……。
「おーい! 薫!」
「……お爺ちゃん」
けたたましい音を鳴らす鉄の馬にまたがるお爺ちゃんが、迎えに来てくれていた。
予想以上に長くなってしまいました、申し訳ございません。
次で最後です。




