第二百一話 皆はどこ? 説明は後!
「……」
「……」
愁の家にお邪魔して何分……いや、何十分経ったか?
俺たちはただ向かい合って……お茶を飲んでいた。
……何故か俺だけ温かいお茶で、愁はどういうわけか冷茶だけど。
何を話せばいいんだろう……会場へ誘導しようにもどうやって言い訳を言えばいいんだ?
というかまだ翔琉やシェダルから連絡が無いし……。
「……で、何しに来たの? 昇」
「あ、えーっと……」
何しに来た? そりゃお前の誕生日を祝うための会場へ案内するためだよ!
そう言いたいのは山々なんだがな! 言えねぇんだよ!
「……もしかして」
「……もしかして?」
なんだ? 何を言うつもりなんだ?
「……俺の事、慰めにでも来たのか?」
「……」
……半分あってる。
「別に気にすんなよ! ……数日経てば切り替え……できるしよ」
「おう……」
愁は笑ってはいるものの、目は悲しい感じがした。
やばい……とにかく話を繋げようか?
「あのよ……うまく言えないけど……お前は一人じゃないからな!」
「……そうだけど」
「……」
「……」
やっべぇー……会話が続かねぇ!
気まずすぎるだろこれ! どうすりゃいいんだよ!
「……そういえば、なんでお前しかいないの?」
「……え?」
沈黙の中、冷茶でのどを潤したであろう愁が、会話を切り出してきた。
「な、なんでそんなことを?」
「いや、お前1人で俺の所に来るってなんでかなーって、シェダルちゃんや翔琉は?」
「あ、いやその……」
確かにごもっともだわ! 愁からしてみれば、俺とシェダルはほぼ一緒にいるようなもんだし、そもそも俺と愁ってタイマンで話したことないわ! いっつも翔琉がいたわ!
……あ、そうだ!
「シェダルは……今、新たな武器を開発しているんだ!」
「新たな武器……?」
「お、おう! ちょうどほら、ヒューモンスターも強くなってきたみたいだから、俺たちを強くするためにもとか何とか言っててよ……」
少し無理があるとは思うが、まぁこれが納得のいく理由だろう、多分。
「……で、翔琉は?」
「あ、翔琉ね。翔琉は……」
やべぇ! 翔琉の言い訳は考えてないわ!
どうしよう……。
「なぁ昇」
「え!? 何!?」
「いや……お前携帯鳴ってるぞ」
「え!? あ、マジだわ」
携帯の画面を確認すると……翔琉からだった。
大チャンス! そしてなんというタイミング!
「噂をすれば何とやら、翔琉から電話来たわ」
これは事実だ、言い訳でも何でもない。
「ちょっと失礼……」
「おう……」
俺は一度部屋から出て、電話に出た。
「……もしもし?」
『あ、昇! こっちの準備終わったから愁を連れ出してくれ!』
「お、おう!」
『段取りだけど……』
……翔琉から指令を受けた俺は、電話を切り、愁の所へと戻った。
「……大変だ! 悠里が今ヤバいらしい!」
「や、ヤバい? なんだよ突然!? ていうか翔琉と何を話してたんだよ!」
あぁもう! 頑固な奴だ!
……そうだ! ここはシェダルの真似をしよう!
「説明は後だ! とにかく行くぞ!」
「お、おい!」
俺は無理矢理愁を外へと連れ出した。




