第百九十九話 ご近所さん、開く玄関!
突然後ろから女性の声が聞こえ、俺は驚きの声をあげてしまった。
「あ、あの……その……」
やべぇ……これじゃあ完全に怪しい奴じゃねぇか!
「あ、もしかして、愁くんのお友達?」
「え、あの、その、はい!」
「そっかー、愁くんも見ないうちにお友達沢山出来たんだねぇ」
「……え?」
沢山出来た? というかこの女性、愁と結構親しい間柄なのであろうか?
俺がそんなことを考えていると、女性は愁の家のインターホンを押した。
お、おい! ちょっと待ってくれよ!
『……はい?』
インターホンから愁の声が聞こえる。
……やはり、あまり元気が無いように思えた。
「あ、愁くん? おばさんだけど」
『あ……山田さん? なんでしょうか?』
「愁くんのお友達が来てるよ!」
『……友達?』
「待っているようだから来てあげなさい!」
おいおいおい、タフだなこの人、何も躊躇せずにスラスラと話したぞ。
……というかお互い名前も知っていて、女性の口調から見るに、やはり愁と彼女は結構親しいのであろうか?
家から階段を下りる音が聞こえ、しばらくすると、玄関が開き……愁が現れた。
見た目はそこまで変わってないようだが、表情は若干暗いように見えた。
「あ、愁くん! この子、愁くんのお友達でしょ?」
女性が俺の肩を掴んでそう言ってきた。
おいおい……まぁ、ここは愁に声を掛けたほうが良いか。
「よ、よう! 愁!」
「……昇」
「えーっと……」
この後何を言おう……なんも考えてねぇよ……。
「愁くん、立ち話もアレだから、中に入れてあげたら?」
「そ、そうですね……」
俺が何を話そうかたじろいでいる中、女性がアシストしてくれた。
ありがとう、本当にありがとう……マジ助かるわ。
「じゃ、じゃあ、お邪魔します……」
「おう……」
俺は愁の家の中へと入っていった。
「じゃ、おばさんはこれで! 何かあったら言ってね! 愁くん!」
「はい、ありがとうございます、山田さん」
女性は、隣の家へと入っていった。
なるほど、ご近所さんなのか。
「じゃ、入れよ」
「あぁ」
玄関が大きく開き、俺は中へと招かれた。




