閑話 暗闇の裏切り
「あと一つ……あと一つだ!」
暗闇の中、椅子に座っているヒースはそう言った。
「楽しそうだね、ヒース!」
「あぁ……これもカルデナのおかげだ、ありがとう」
「えへへ……嬉しいな」
ヒースが人をモンスターにさせる携帯電話を配布する理由……それは……。
「もうすぐだ……もうすぐ私はこの星を……」
ヒースは歪な形をした携帯電話を持ってそう呟いた。
「ねぇ、ヒース! 聞いていい?」
「なんだい? カルデナ」
「ヒースのパソコン見て知ったんだけど……」
「こらこらダメじゃないか、人のパソコンを勝手に見ちゃ……」
「ごめんなさい……」
カルデナは悲しい顔をして、下を向いた。
「そんなに落ち込まなくていいよ、次は見ちゃダメだよ?」
「うん……」
「それで、何を見たんだい?」
「えっと……なんか……『黒い』……」
「黒い?」
ヒースは椅子から立ち上がり、カルデナの方に歩き始めた。
「ひ、ヒース?」
カルデナはいつもと違うヒースの姿に恐怖を覚え、後ずさりをした。
「カルデナ……何を見たんだい?」
「え、えーっとね……」
カルデナは怖くなり、自身のスキルを使って逃げようと考えていた。
……が。
「スキルは使わせないよ……」
ヒースは瞬時にカルデナの首を掴んだ。
「ひ、ヒース……苦しいよ……」
ヒースはそのままカルデナを床に叩きつけ……今まで彼女にお使いをさせていたものを腕に取りつけた。
「う、ぐ……」
カルデナは腕を抑え、苦しみだした。
ヒースはカルデナの首から手を放し、上から見下ろすように仁王立ちをした。
「さぁ、言え。望みは何だ?」
「……ヒースに……喜んでもらいたい……」
「良く言えたな」
ヒースは、かつてカルデナが多くの人にそうしたように、物を手渡した。
しかし、手渡した物は、携帯電話ではなかった。
それは……金色の鍵だった。
「その望み、今すぐ叶えてこい」
「……」
カルデナはその鍵を受け取り、頷いた
「さぁ、この私を喜ばせろ!」
カルデナはヒースの言った言葉を無表情で聞き入っていた。
今までの彼女であったら、恐らく満面の笑みを浮かべていたことだろう。
そしてカルデナは無表情のまま、暗闇の奥へ奥へと消えていった……。
「ふふふ……あははははははは!!」
ヒースはそんなカルデナの姿を見て……大きく笑った。




