第二十一話 なぜここに? ケーキは放置
「さて、ところでお前はなぜここに?」
「あぁ、そういえば俺も聞きたいことがあるんだよ、ここなんなんだ?」
「質問を質問で返すのか……まぁいい、ここは私がダンジョンの途中に作った、通称『安息の地』だ」
「安息の地?」
「確か……第二階層の入り口近くだったかな?」
「モンスターとかがここに入ってきたらどうすんだよ?」
「あぁ大丈夫大丈夫、ここは鍵スキルを持つ者だけが入ることができるんだ、それ以外の奴は入り口を見つける事すらできない」
「ダンジョンでそんなことできるの?」
「腕輪の力を侮るなよ? 錯乱スキルに建設スキル……あとその他諸々、色んなスキルを使った!」
「万能だね」
「ちなみに、お前が突破したモンスターどもは適当に捕まえて、祭壇の扉を開けたら降ってくる仕掛けだったんだ! すごいだろう?」
「あーすごいすごい……」
下手をすれば死ぬような仕掛けを何故作ったのか?
腕試しのつもりだったのか?
「お前は見たところ……学生か?」
「あ、あぁ……さっきの質問の答えだけど、学校の授業の一環でダンジョンに入ったら、やばいモンスターが出て、逃げようと思ったらモンスターの集団に囲まれて、俺は何もできなくて……」
「あぁもういい、皆まで言うな、大体わかった、即ちお前は無能ゆえに迷子になった挙句、気が付いたらここに来て、腕輪と鍵の力で私の仕掛けを突破したというわけだな」
「あ、あぁ……」
無能って自分で分かってるんだけど、人に言われるとなんか腹立つな。
「ということは、ご学友が心配しているんじゃないか?」
「いねぇよそんなもん」
「照れるな、鍵スキルが一人でここまで来るなんて、普通は難しい」
「ならなんでこんなところで同じ鍵スキル持ちを待ってたんだよ」
「あ、そういえばそこんところ考えてなかった、まぁお前が来たから結果オーライだ!」
「……」
腕輪の音といい、ちょっと抜けてることといい、こいつ本当に天才か?
馬鹿と天才は紙一重って言うけれども。
「ともかく! まずは地上へ行こう、私も起きたからには、外に出ないとな!」
「どうやって出るんだよ、ダンジョンに出てモンスターどもを倒しながら行くのか?」
腕輪の力ならそんな事可能だろうが……
「そんな面倒な事はしない! こいつを使う」
シェダルはケースから、持ち手に渦巻きが掛かれている鍵を取り出した。
「なんだそれ?」
「説明は後だ! さぁ来い!」
「お、おい! 紅茶とケーキは!?」
そんな事に聞く耳を持たず、シェダルは俺の腕を引っ張って外まで連行した。