第二十話 新たな同盟! ついに結成!
「……話を戻すと、天才科学者である私はこれを使って無双した!」
「天才って、自分で言うか?」
「実際事実だ!」
「まぁ……うん」
実際この腕輪がそれを証明しているし……まぁそうなんだろう。
「楽しかったなぁ、ダンジョン攻略したり、商会作って大儲けしたり、盗賊ギルドを潰しまくったり……」
「濃すぎる人生だね」
「……だが、そんな生活もある日突然終わる」
いきなりシリアスな言い方になった。
「ウトピアの上の奴らが私の能力に嫉妬……もとい、腕輪の力を怪しんで、投獄されそうになった」
「普通に考えたらおかしな話だろ、そんな多方面すぎる活躍を見せる人なんて」
そんな人、現実に果たしているのだろうか?
金持ちが会社を経営しつつ、宇宙行ったり、慈善事業したりなんかはよく聞く話だが。
「こうなってしまったらどうにもできない、私は賄賂を渡して、クッソつまらないであろう悠々自適の隠居生活を送ろうとした……その時!」
「ウトピアと地球が融合した?」
「その通り! 私は、これはまたとないチャンスだと思い、有り金、名誉、すべてを捨ててこの国へ降り立った!」
「よくもまぁ捨てる気になれたね」
「そらもう! こんな事態になったら、世界中が混乱して、そんなものあっても仕方が無いと考えたからね! 私はじっとしているのが一番嫌いだ! 何もせずに隠居生活を送るなんて我慢できん!」
「切り捨ての判断が速すぎる気もするけど……」
「そして、降り立ったこの国は素晴らしいの一言だった! スキルのラベリングもなく、みんな自由に好きな仕事就き、好きな人生を歩んで……スキル社会で職業の自由が無いに等しいウトピアなんかとは違い、みんな生き生きとしていた!」
シェダルはまるで自分の功績を語るかのように、スキル社会になる以前の日本を語った。
「……だが、先にも言ったように、融合してダンジョンが出現してしまった以上、スキル社会の導入は避けられん、ダンジョンについて、ウトピアは何もかも知り尽くしている、きっと『助言』と称して、他国に干渉しだすに違いない。」
「そこまで予測できるなんてすごいね。」
「だから私は、一度眠って、同じ鍵スキルがやってくれるまで待つことにした!」
「なんで?」
「このまま一人でまたウトピアと同じような生活を送るのも面白くないと思ってな、どうせなら同じスキル持ちが来ないかなーって思ったりしてな、それに……」
「それに?」
「この融合、明らかにおかしい、先にも言ったがこれは普通ではない現象だ、何か陰謀があるのかもしれない。」
「……」
陰謀、またもあの駅前の人々と同じことを言うシェダルに、どこか説得力を感じた。
「謎を解明しようにも、一人じゃ何もできない、だが今は君がいる! さぁ、一緒に鍵スキルとして新たな人生の一歩を進もうではないか! 昇!」
「……」
新たな一歩……俺は……
『やっぱ鍵スキルは使えねぇな!』
『レベル1は足手纏いなんだよ!』
『クソの役にも立たないわね!』
『使えない人……』
……あの夢での出来事。
『お前鍵スキルなんだって?』
『いずれは父さんの後を継ぐんじゃなかったか? ははは!』
『その父さんもいなくなって、可哀そうな奴だなぁ』
……クソみたいな記憶。
決断は決まっていた。
「……おう! 俺はこのスキルでみんなから馬鹿にされてたけど、この腕輪があれば、そいつらを見返すことができる! それに、俺はこのスキル社会を覆したい……その陰謀ってやつも、暴きたい!」
「利害一致、だな!」
シェダルは腕を差し伸べる、握手しよう、ということか
俺はその腕に答えた。
「うむ! ではこれから頑張ろう! 昇!」
「よろしく! シェダル!」
こうして、同盟(?)が、ダンジョンのどこかで結ばれた。